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傷つかないための6つのカギ

以下のリストは、1冊の書籍からの引用になります。タイトルはコンパクトに「傷つかないための」としましたが、「決して傷つかない」とか「人間関係のストレスをゼロにする」などということは、そうそうできるものではないのです。

私はこの問題に個人的にも強い興味を抱いてきました。私が紹介するマインドハックの一翼には、明らかに「他人からの心理攻撃」を最小限度にとどめたいという欲求があります。その方法論には徐々に自信を持ちつつありますが、だからといって「人間関係ストレスゼロ」を達成できたわけではありません。

他人からの攻撃に傷つかないこと、傷ついた心を回復させることを目的としてみたとき、これから紹介する「6つのカギ」と本書『傷つかない技術』は、はっきり言って実行が難しく、表現もいささか抽象的です。「6つのカギ」のうち1つでもものにできれば、おそらくは十分でしょう。

それでも私は本書を高く見積もっています。この本に書かれているとおり、この問題は簡単ではないのです。問題をわざわざ難しくしているのではないのです。もともと難しい問題なのです。でなければ、「人間関係のストレス」と言っただけで、じつに多くの人が即座に何を言っているかを理解する、などということにはならないはずです。

類書はいくらもあります。中にはかなり役立つ本もあります。今後はそういった本も紹介していきます。しかし、本書より易しい類書は、読むには適していますが、この問題への効能という点で考えた場合、不十分であることが少なくありません。もともと気丈な人が読んで役に立つだけでは十分ではなく、感じやすい人にこそ力を与えなければならないはずです。『傷つかない技術』は一見取っつきにくいのですが、よく読むと、問題の奥深くまで切り込んでいることが分かるはずです。

それでは、いかが6つのカギです。解説は引用ではなく私のつけたものです。

第一に、自分に向けられた批判に対して効果的に対処しなければならない理由を明確にすること

これは本書中、私が考えるに最重要の方法論です。ほとんどの場合、これはできていません。できないからこそ、「引きずる」のです。「自分に向けられた批判に対して効果的に対処しなければならない理由を明確にする」というのは、とても難しいことです。これが簡単にできる、という人は、対人関係で傷つくことがほとんどないでしょう。

とても人が良く、受け身な女性をイメージしてみてください。あなたの勝手なイメージでけっこうです。そうした女性には、「自分に向けられた批判に対して効果的に対処しなければならない理由を明確にする」ことがたいへん難しいとわかるでしょう。別に男性でもけっこうですが、今のところはまだなお、こうしたことができにくい性別としては、女性のほうが多いと考えられます。

「自分に向けられた批判に対して効果的に対処しなければならない理由をあいまいにする」人は、男女いずれであれ、対人関係に敏感で、立ち直るまでに時間を要する人です。この理由があまりにも明らかになったとき、批判に効果的に対処しなければならなくなるからです。でなければただの言葉遊びでしかないでしょう。

第二に、当面している事態の重大さを瞬時に判断できるようになること

瞬時にはできません。本書の著者とてできないのではないか、と私は疑っています。

この項目は具体的には簡単な話です。誰かに批判されたとして、その批判を重く受け止めるべきか、それとも無視するべきか、ということにすぎないのです。

この項目をやりやすく単純化するなら、たとえばこんなことが考えられます。ある人の批判を、100%無視したとして、つまり聞かなかったものとしたとき、起こりうる最悪の結果とは何かを、紙に書き出してみること。これを手早くやれるようになればなるほど、実は対人関係のダメージを、より少なくできるのです。

第三に、超然として批判に動じない態度を身につけること

これもムリでしょう。これができれば、この問題は大半、解決済みです。

しかしこの態度をとる方向に向けて、努力を傾けてみることは、意味のあることです。人はわざと作った表情に、自分の感情が影響されると、心理学者がよく指摘しています。ムリにでも笑えば、多少は気持ちが上向きますし、怒鳴られても平然としていれば、目に見えて落ち込むよりは、効果的な反撃になり得ます。

ポイントは、動転しないことです。そして、自分の意見をすぐに口に出さないこと。このテクニックを繰り返し学習すれば、簡単に他人にコントロールされなくなります。

第四に、批判に反応する際、心をコントロールする術を身につけ、自分自身との対話を自分が意図した方向に沿って進むようにすること

これも非常に難しい。3つめのカギと同様、これができれば「傷つかない」ことになります。

普段から私たちは、落ち込んだときには落ち込んだらしい「内的対話」を繰り広げます。心の中ではかなり消耗戦的な、ネガティブスパイラルにはまっていきます。そもそも落ち込んでいるのですから、そうなって当たり前なのです。

これを、意図的に上昇気流に乗せられるのであれば、そもそも「傷ついて困る」人などこの世からいなくなるでしょう。したがって、このアドバイスの通りに実行するのはムリがあるものの、

・ネガティブな自己対話をやめようとすることはできること
・ネガティブな自己対話をやめることには意味があること

をいつも認識するようにすれば、効果が上がってきます。それが、「自分自身との対話を自分が意図した方向に沿って進むようにすること」の一歩になるでしょう。

第五に、自分のパーソナリティをコントロールできるようになること

これについては、本を読む必要があります。そもそも「パーソナリティをコントロールする」という言葉の意味するところ自体、あまりにもわかりにくいのです。

この「カギ」によって本書の著者がすすめているのが「認知行動療法」なのですが、少なくとも著者はそれ以前に、「パーソナリティ」を破壊されないことを強調しています。それはここで簡潔にまとめられるような話ではなく、本当にそれが必要になったならば、それなりの時間をかけて取り組むことが求められます。

第六に、自分を傷つける批判に対処するため、どんな行動をとることができるか学ぶこと

この第6番目の「カギ」は、意味はかなり分かりやすいものです。多くの人は実のところ、最初からこれを目指してしまいます。しかし私は、本書の著者がそうしたように、これを最後に回すべきだと思います。

批判に対処するために行動を起こすことは、一見至極まっとうで、前向きな対応策ですが、危険でもあります。エネルギーを二重三重に費やすばかりか、批判者の主張を結局認めることにもなるからです。つまり、「自分は正しくないことをしでかしたのであり、それを行いによって正さなくてはならない」ということになりかねないのです。

著者はそれを求めてはいないのですが、「批判に対処するために行動を起こす」と、結局これを選んだことになりがちなのです。1度や2度ならまだしも、慢性的にこれを繰り返していると、本当に燃え尽きてしまいます。そこまで行くと「心の傷」程度では済まなくなります。ですから、上記6項目中、最後に検討すべき手段です。