旧ライフハック心理学

心理ハック

「小分けにする」とやる気が出るのはなぜ?

方々で、「やる気が出ない」という問題について「小分けにすること」というマインドハックを提案しているのだが、この方法がなぜ有効なのだろう、と考えた。

それほど劇的な効果があるわけではない。
しかし、2分割でダメなら3分割。それでもダメなら10%だけにするなど、とにかくやる気が出るまで分割すれば、なんとかなることが多い。

これはなぜか?

先日、『ジパング』という漫画を買った。第37巻だ。ということは、36巻まで読んできたことになるのだが、はっきり言って第36巻はちょっとイマイチだと思った。

それから今、鞄の中には『複雑系』を忍ばせていて、これが猛烈に面白い。しかし私は、やっぱり電車の中で、とりあえず『ジパング』を読んだ。面白かったけれど、『複雑系』にあっさり優先した理由が、自分でもよく分からなかった。

なぜ、漫画はこう面白いのか、また読みやすいのか。私の教養の問題もあるかもしれないが、やせ我慢の精神は、あまり縁がない。

漫画を読むというのは、やる気がとても出やすい行為だ。
明らかに、活字を読むよりもすっと入ることができる。
このことはまた、没頭しやすいということでもある。集中しやすいと言ってもいい。つまり、気損じが起こりにくいのだ。

気が散じやすく、注意が散漫になるのは、アタマに余計なことを意識させるからだと思う。たとえば今、わりと没入してこの文章を書いているけれど、読者がどう思うかとか、肩が凝ってきたとか感じ始めると、注意が散じてやる気を失う。

読者がどう思うかをイメージしたり、悪い反応を読んだときの自尊心を保つためにすることを予測すると、脳としては余計なエネルギーが必要になる。文章を書くという目的からすれば、逸脱だからだ。

また、肩凝りへも脳が対処しなければならない。指圧センターを予約するとか、ストレスに対応するとか、みんな脳の仕事だ。もちろん文章を書くこと自体からは、大きくずれた仕事である。

つまり、行為Aをするなら、脳は行為Aに全力を注ぎ込みたいのだ。そして、結果をきちっと出したという、フィードバックaを得る必要がある。

フィードバックaが強い快感であれば最高だ。漫画を読んでいる最中には、想像力をたくましくするとか、文字を読むためのサッケードを激しくするとか、そういう余計な活動がおそらく非常に少ないのに、楽しみはきちっとフィードバックされるから、やる気が出やすいのだろう。

もちろんこういう結果になるのは、マンガ家さんたちのたゆまぬ努力のおかげである。いかに読者の負担を少なく、伝えるべきことを伝えるかについて、かなりのエネルギーが注がれているからこそ、私たちは漫画を楽に読める。

ここで話を始めに戻すと、大きな仕事をやり遂げようとすると、途中で生じそうな問題が、たくさんあると思ってしまう。思うだけでなく、実際そうなることが多い。

仕事の最中に余計な問題が発生すると、その問題にも脳は対処しなければならなくなる。つまり行為Aに対するフィードバックaという関係が、ストレートにならないのだ。食事を作っている最中に、夫が関係ないことで文句をつけたりする行為が、いかに家事へのやる気を殺ぐかが、こうしてみるとよく分かる。

あるいは、何かを解約するための書類に書き込む行為が、あれほど先延ばしの対象になるかもわかりやすい。途中で「何とか番号」が必要になったりすることが多く、そうした番号を「探す」という雑務は、労多くして益の少ないものだからだ。ここでも、逸脱が問題になる。

仕事を100分割にでもすれば、少なくとも行為Aに対するフィードバックaの対応関係は確保できる。そのフィードバックは歓喜をもたらさないかもしれないが、せめて「終わらせた」という達成感くらいは得られるものなのだ。

解約の書類を全部埋めるとなると、途中でどんなアクシデントに巻き込まれないとも限らない。しかし、最初の氏名を書くだけなら、まず確実に途中で邪魔が入ることなく、終わらせられるだろう

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1885年 エビングハウス『記憶について』を出版

1885年ハーマン・エビングハウスが『記憶について』を出版した。

エビングハウスは、自分自身を被験者として1879~80年と83~84年に、無意味綴り、節約法、再学習法など記憶測定に関する多くの実験を工夫しつつ、有名な「忘却曲線」などの実験結果を得ている。

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Google世代の整理術「デジタル情報整理ハックス」更新!

  • 2008年10月20日 (月)|
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23 「とりあえずとって」おきたくなる原因

簡単な検索で情報を的確に引き出せるようになれば、情報を整理する手間を大きく減らすことができます。今回はブラウザのブックマーク(お気に入り)とWebサイトの検索を例にとり、効率の良い検索と情報整理のテクニックを考察します。

http://journal.mycom.co.jp/series/hacks/023/index.html

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1890年 ウィリアム・ジェームズが『心理学原理』を刊行

James, William(1842-1910)は、アメリカを代表する心理学者。哲学者でもある。
ハーヴァード大学で医学を履修。
ウィリアム・ジェームズは、機能主義心理学の先駆とされる。
機能主義とは、ウィルヘルム・ヴントなどの構成主義に反対し、心的現象を環境に適応し生存を維持するために発動される機能と見なす。したがって、心的現象と生理現象との関係を明らかにすることを心理学の目的と考える。

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その「勉強法」はあなたに合っていますか?

新刊上梓のお知らせです。
自分の「勉強本」としては、2冊目になります。タイトルも似ていますが、テーマは違います。

人が違えば脳の構造が違い、脳が違えばその働きが変わります。
が、勉強法というのものはどうしても、ある人の信じる「モデル」に基づいた方法論であるため、そこに特定の「偏り」があることは仕方がないことです。

本書はその「偏り」がどう偏っているかを見分けるための、視点を提供したいと思って書きました。

6タイプのための勉強法

1.分からないと気持ちが悪い「理解型」
2.覚えるのは苦にならない「暗記型」
3.勉強それ自体が楽しい「好奇心型」
4.勉強は手段の「目標達成型」
5.一人で勉強したい「独習型」
6.みんなと勉強したい「スクール型」
『』より

1.分からないと気持ちが悪い「理解型」

よく「分数の割り算」で問題にされている話です。つまり、勉強ではどの程度「理解度」を重視すべきかという問題。

私はそれは性格によると、強く感じています。教科が難しくなればいずれにせよ「理解最重視」では先へ進めなくなりますが、「理解しないと気持ちが悪い」という人は、いて当然です。(げんに私がそうでした。)

「気持ちが悪い」とか「先へ進めない」という感覚自体が、心理的なもの。
それがどの程度であるかは、個人差があるわけです。「クオリアは個人的なもの」なので。

本書では「理解型」の典型として、脳科学者の池谷祐二さんを紹介させていただきました。池谷さんは「九九も暗記していない」と著書の中で述べられているのですが、そこまで極端な事例があるとおり、「理解重視」でかなりの専門分野まで学習を進められることが分かります。

2.覚えるのは苦にならない「暗記型」

逆に、「暗記重視」でうまくいく人が当然います。
「数学は暗記だ」と言ったのは、精神科医の和田秀樹さん。
「英文を丸暗記せよ」と主張したのは、経済学者の野口悠紀雄さん。

これらの人々は「覚えるのが先。理解するのは後」という発想で勉強されています。
また、そうした勉強法を、強く推奨されています。

そもそも記憶力というものの個人差は大きく、暗記力の差も極めて大きい。
世の中には、一読したものは決して忘れない人から、暗記がそもそもできないという人まで(記憶ができないのとは少し違います)幅広く分布しているのです。

そのように様々な人たちが一様に、「暗記は楽だが理解は困難」と言えるわけがありません。

私が本書を企画するに当たって、真っ先に考えたのがこの

・暗記か理解か

というタイプの違いでした。この2つのタイプだけをとっても、勉強術というものは、まったく違ってくるべきなのです。

3.勉強それ自体が楽しい「好奇心型」

暗記型か、理解型か

というタイプ別に続いて考えたいのが、好奇心型か目標達成型か、というタイプ分けです。

心理学的な用語を使うなら

内発的動機づけか、外発的動機づけか

ということになります。出版社の人から、「専門用語を避けて欲しい」という要望がありましたので、「好奇心型」と「目標達成型」に置き換えました。

この2つのタイプもまた、勉強の方法がすっぱり分かれると思います。
たとえば脳科学者の茂木健一郎さんは、明らかに「好奇心型」で勉強する方法を述べておられます。

本の中で強調した一個ですが、このタイプにはことさら「ゴール」や「ご褒美」は必要ないのです。それどころかむしろ、邪魔になることさえあります。この違いもまた、性格からくるものです。

最近、日本人のノーベル賞受賞が相次いで大ニュースになりましたが、彼らの言っていることは「好奇心型」のためのものです。「面白いから研究した」「好奇心にしたがってどこまでも突き詰めること」など、いずれも「内発的動機づけ」そのもの発想です。

4.勉強は手段の「目標達成型」

言うまでもなく、好奇心型(内発的動機づけタイプ)の反対は「目標達成型」(外発的動機づけタイプ)です。明確なゴールやご褒美が、勉強のモチベーションを高めるというタイプの人たちです。

両者の違いは

勉強自体が楽しい・面白い(好奇心型)
勉強は手段(目標達成型)

ということになります。

勉強本に恵まれているという意味では、目標達成型の方が明らかに恵まれています。
ゴールを明確にせよ、とか、勉強からのリターンを力強くイメージせよといったアドバイスはみな、このタイプの人に向かって出されているものです。

5.一人で勉強したい「独習型」

勉強は一人でしたいか、それとも仲間とやりたいか。
この2つのタイプもまた、方法論を真っ二つに分けてしまいます。

一人でやりたい人は、社会人になればむしろ有利です。ある意味でそれは、

ひとりでもできる

事を意味するからです。
幼少期、思春期に、このタイプは不利なのです。勉強するにはふつう「学校」にいかなくてはならないからです。

「勉強嫌い」なのか「学校嫌い」なのか「一人が嫌い」なのか、人は一度振り返ってみると、良いと思います。それらは基本的に別々のことなのに、混同されて議論されていることが少なくないのです。

6.みんなと勉強したい「スクール型」

社会人になっても、スクールで勉強したいという人が、べつに不利になるわけではありません。スクールで勉強するというのは、どの世代でも「王道」のやり方でしょう。

ただ、勉強するということは突き詰めると、スクールへ行っても「一人でやる」ことにちがいはないため、ある種の孤独感を完全に回避することは不可能です。

それからいうまでもなく、スクールに通うということは、お金と時間を必要とします。が、どうしてもムリでないなら、孤独に勉強したくない人は、スクールに通うほうがいいでしょう。その方がムリがないですし、得るものも大きいはずだからです。

まとめ

本書はタイトルが

スタディ・スタイル・ライフハックス・勉強法

という、ムリヤリ詰め込んだようになってしまいましたが、個人的にどうしても

タイプ別勉強術

という名前を付けたかったことと、出版者さんがどうしても「ライフハックス」を入れたかったということの、両者の主張を容れる形をとったため、こうなりました。

私としては初めて、学習研究社さんから出した本で、やや「学習研究的」になったきらいはありますが、すごくまじめに書いた本なので、議論の余地がたくさんあると思いますが、お手にとっていただければうれしいです。

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