心理ハック
「タスク管理」を広めたい
8月26日(日)は第4回タスクセラピー開催です。
もちろんいつもと同じように「初心者のためのタスク管理入門」なのですが、今回はいつにもまして「初心者のため」を強力に打ち出していきたいと思っています。
だいたい、なぜ「初心者のためのタスク管理」なのか?
タスク管理という言葉は何ともお堅い上に、なんだかよく分かりにくいものでもあると思うのですが、結局他によい言葉があまりなく、しかしなかなか強力な手法なのでがんばりたいと思うのです。
全く対称的な2人の講演
8月26日には二十一回猛士にならんと欲してちょっとおかしくなりつつあるjMatsuzakiさんと、御自身のブログで数式のようにタスク管理を解き明かそうとする明石さんという、タスクセラピーの誇る講師陣2人に講演していただきます。
このお二人は全く対称的で、jMatsuzakiさんに関してはあまり説明もいらないと思いますが、直線的に目的達成のためにタスク管理しているという、非常にシンプルでわかりやすいコーチです。
一方の明石さんはというと私か誰かに何かをお願いされてもごにょごにょと難解な風刺めいたことを口籠もりつつ、想像以上の短時間にスパッと仕事を完成させてくれるという、いわゆる「できる人」です。小さなノイズが入るけど信頼度抜群のコーチです。
目的達成のためのタスク管理と、スピーディな処理のためのタスク管理。たいていの人は両人の間のどこかに位置するものですが、両人ともにタスク管理しているという事実が大事なのです。
タスク管理がなんの役にも立たないのだったら(そう思っている人はかなりの数に上るわけですが)、jMatsuzakiさんはなにもなしえていないでしょうし、明石さんはそもそもタスク管理とはとっくに縁を切っているでしょう。
タスク管理というのは、単純な手法のようで、かなり汎用的に役立つということです。タスクセラピーには様々なコーチの方に無理を言ってきていただいているのですがそれは、コーチにとっては「これ以外ない」という完成された個人的なシステムがある一方で、彼らの「タスク管理」だけを抽出して、参加者の実情に応用すれば、各参加者の日常的な難しいことが片づくはずだと考えたからです。
大きな目的を達成したいという人もいれば、毎日の仕事に忙殺されているだけの状況をどうにかしたいという人もいるはずで、そもそも仕事をできるだけしたくないという人もいるでしょう。タスク管理はその全ての人に役立つものです。だからタスク管理を試していただきたいのです。
8月26日 第4回タスクセラピー 「仕事管理は手帳だけ」からの脱却(東京都) |
MacアプリのDueもオススメです!
たかがリマインダーのためにiPhone有料アプリに加えてMacでまでお金を払うことなどない、というのももっともだと思うのですが、実際便利なのです。私はこれでまた、ロディアの消費量を減らしています。
なんてことはありません。本当に。このイメージの通りです。これと全く同じものがiPhoneにもあって、時刻が来るとどちらでもリマインド。どちらかをアップデートすれば同期がかかります。
クラウド版リマインダーというわけです。でもこれが非常にすばらしい。何かを思いついたらMacからバシバシ入力してあげればいい。そしてiPhoneを持ち歩いていれば、だいたい何でも思い出せます。
Dueは知っての通り「うるさい」アプリですから、そうそうやり漏らしたりすることはありません。ありとあらゆる意味で、わかりやすいシステムです。
今まで所用はロディアに書いてそれを持ち歩いたり破いたりしていたわけですが、ロディアは震えてくれたりはしないので、やっぱりやり忘れることはあるわけです。めったにな意図はいえ、やっぱりあったのです。その間抜けぶりを先にどうにかしろと言われそうではありますが、生まれ持ったものはしようがないのです。
でもこれで間抜けぶりもだいぶ解消されます。
蛇足に近いと思いますが、逆方向のリマインドもけっこう便利です。出先でiPhoneDueにセットをし、それをMacで知らされるという。出先で私はTaskchuteを使っていないので、この補完は非常に便利です。
同期のタイミングですが、Mac版ではかけたいところでcom+shift+Rで同期します。起動時にも同期します。おそらく終了時にも同期です。iPhoneでも同期タップがありますが、基本は起動時と終了時。Dueというアプリの性質からして、とくにiPhone側の起動終了自動機は理に叶っています。
さらに詳しく知りたい方はこちらのエントリをどうぞ!
▶iPhoneで大人気のアラームアプリ『Due』のMac版がリリース、iPhoneと同期機能やショートカットが便利そうだ! | トブ iPhone
プロジェクトの最低限の役割はトリガー
「求めている結果」を明確にした物が「プロジェクト」であり、そこには0個以上のアクションが含まれている。
実に色々と考察されている、ksworksさんからの引用です。このエントリには啓発されました。中の人がコーチをして下さっているというのはとても頼もしいかぎりです。
このエントリを拝読する以前から私が考え込んでいたことがありまして、前回も書いたとおりサブタスクがなんの分解にもなっていないという事態は少なくないのです。
私はこれを以前「よくないこと」だと思っていました。「小分けにせよ」「分解せよ」とよく言われ、また自分でも口にしていたとおりです。しかし今は「普通に起こること」だと思い直しています。
プロジェクト(ないしは少し大きめのタスク)の最大の問題は、時間をおいて取り組み続ける必要がある点です。「テニスの上達」という少し大きめの目標にしても、間を全くおかず、百日間飲まず食わず眠らずでテニスばっかりしていたら、今よりはずっと上達しているはずです。
もちろんこれは世迷い言で、不可能です。それにこういうやり方は学習の方法としてもよくありません。が、たとえば部屋の掃除にしても、間を空けるからわけがわからなくなるのです。よく売れている「片付け術」の本にはたいていあるように(私は反対のことを書いているのですが)「片付けはお祭りで一気にやってしまう」べきだというのは一理あります。
一気にやれないことは記憶をつなぐしかない
一気にやれれば話は早いのです。ですが現実問題としてそうはいかない。アクションが思いつかないならそこで思いつくまで考え続ければよい。しかしそうも言ってはいられない。仕事があります。他にやることもあるからです。
だから私達は「プロジェクト」、より正確には「プロジェクト名」という記号で行動をつなごうとしているわけです。ksworksさんに敬意を表し例として「彼女を作る」というプロジェクト「名」にします。
この表現を変えてはいけません。「恋人を作る」とか「彼女にアプローチする」とか「ガールフレンドを作る」にしてはダメです。表現揺れもいけません。「作る」とした以上「つくる」ではダメです。ですから辞書登録する必要があります。
「彼女を作る」というプロジェクト名であれば考えることでも、「ガールフレンドをつくる」になるとその限りではないからです。下手をすればモチベーションに影響します。「ガールフレンドなら、いいや」となりかねません。これは事例が良くないのですが、非常に大切なことです。
書斎を見て「ああ乱雑だなー。もっとスッキリしていれば仕事もはかどるのに・・・」と思って「部屋を整理する」というプロジェクトをつくってしまうと、一週間後にそのプロジェクト名を見た時「部屋の整理?どうして?」となりかねないのです。
つまりプロジェクト名とは、記憶を引きずり出すトリガーになります。トリガーが一定していてすら、私達は同じことを思い出せないのに、トリガーが「揺れ」ていたら話にならないのです。
何をしたいと思ったのか?(プロジェクト・タスク)
なぜやりたいと思ったのか?(目標)
どのようにやろうと思ったのか?(チェックリスト・レシピ)
どこまでやったのか?(ログ)
これらが正確に記載されていて初めて、あまり間をおかなければ、プロジェクト名をもって「私(過去)」と「私(未来)」をつなぐことができます。この連鎖が続く限り、「私の力」が積分されで巨大になっていく。力の方向性がだいたい正確であれば(これのチェックにもログが必要)部屋くらいは片づくでしょうし、彼女だって作れるかもしれません。
プロジェクト名や大きめのタスクとは「トリガー」になります。サブタスクには必ず「小分けにされた手順」を書けるとは限らず(書ければ一番いいのですが)、トリガー(「月にいくぞ!」)によって誘発される思いつきや手順らしきアクションが並べばいいのです。というよりもそれを並べるしかないのです。
しかし思いつきを全部実行に移せるわけがありません(というよりも実行に移すべきでないことも多い)から、そのうちの一部は「カタログ」にでもいくしかないでしょう。
プロジェクトかコンテクストか判然としないとき
現実のアクションというのは、プロジェクトの元にあるのか、それとも何らかのコンテクストにおける行動と考えるべきかは、実は自明でないことが多いものです。
たとえば旅行前に薬屋さんにいって、必要なものを買いそろえようとするとき
□薬局
└□キンカン
└□日焼け止めクリーム
└□目覚ましガム
└□箱ティッシュ
というようなリストを作ったとします。一見したところこれは「薬局」がプロジェクトのように見えてしまっていますが、言うまでもなく「薬局」はコンテクストです。この種の混乱が実際に二度手間を発生させるのは、たとえば「旅行に必要なものリスト」(これもプロジェクトらしく見える)などを作ったとき、「薬局で買うモノ」をそのタイミングで思い出してしまったケースがあります。
人の認識や記憶は決して「旅行はプロジェクト」で「薬局はコンテクスト」ということをポップアップさせられないのです。それは訓練のたまものです。薬局などは場所ですからじっくり考えれば上記のようなリストは、本当は避けるべきだと考えることもできますが、最近私が買った新しいMacなどになると、どうしようもなくなってきます。
はたしてMBA13「で」設定するのか、それとも「を設定する」のか。もうどっちでもいいと思うでしょう。しかし次のようなリストを作ってみると、どうしても悩ましい問題が残ります。
これらをMBAにインストールして設定すればいい。ですが、TextExpanderやiCOmputaについては、他にも色々とやりたいことがあったのです。ならばこの下にぶら下げていけば良さそうですが、そんなことをしていると、MBAの設定がいつになっても終わらない。できれば今週中にも使いたいのでそれもよくないのです。
また、すでにTextExpanderでやりたい設定のことをリスト化してしまっています。そのリストにおいては、TextExpanderがプロジェクトのように、少なくとも親タスクとして振る舞ってしまっているのです。
私はOmnifocusを使ってこの問題については、親タスク、またはプロジェクトを全て同時にコンテクストにもするというやり方でしのいでいます。こういうところがOmnifocusはとても秀逸で、他のツールでもできることですが、やりやすい。
これで「コンテキストビュー」から見れば、TextExpanderやDropboxというリストアップが得られます。また、Omnifocusには Focus in new windowという機能があって、どのタスクもどんなプロジェクトの元にあるかを右クリックから新しいウィンドウで即座に把握できるようになっていますから、思いついたトリガーでまとめて処理するにはとても便利なのです。
以上のことを非常にわかりやすく、ほとんどバカげた表記にしてみると、こういうことです。
□今日のホームパーティ
└□ホットケーキを作る
└□小麦粉
└□小麦粉の有無をチェック(@今日、@家)
紙の上の表記だからこうなるわけですが、左の一番先頭に出てくる「今日、家で」という概念が、末端項目のコンテクストとしても現れてしまいます。これだけならべつにどうということもないわけですが、長大なリストの中でこれが生じると、リスト作成中に当惑した気持ちに襲われるものです。
以上のような困難は、おそらく私達の現実認識というものが、コリンズとロフタスが提唱したような活性化拡散モデルに近いものだからだろうと考えられます。
想像力で行動すべきできないとき
「リア充」って言葉が浸透してるのも「コンプレックスの時代」の表れだと思う。参加できなかったオフ会を惜しむ人、誘われなかった飲み会を恨む人、オタクアカウントで恋人の話をする人を妬む人、毎週末出歩いてる人に羨望と諦念の混ざった目を向ける人。げに世知辛きSNS時代かな。
— ゆのきさん (@yunokixxx)
最近よく読んでいるブロガーによるこのつぶやきに触発されましたので記事にします。ただここで私が取り上げたいのはコンプレックスの話でもSNSのことでもなく、タスク管理の話です。
上記引用とタスク管理になんの関係があるのか?
「想像力」の厄介さとコントロールの問題としてみると関係があるのです。
このブログではしょっちゅう引用している『幸せはいつもちょっと先にある』を開くと、いかに私達が想像というものに振り回されているかについての事例が、過剰に盛り込まれています。読者のほとんどはうんざりしてしまうでしょう。タイトルがそもそもそうですし、表紙の絵もまたそうです。
このチョウチョを追っかけさせ続けることこそ「想像力」というものの本来の機能ではないかと、私はよく思っています。著者のダニエル・ギルバートも指摘しているとおり、想像する内容というのは間違って楽観的か、間違って悲観的かのどちらかになりがちです。理性で修正してやらないとなかなか「ほどよい」ところに収まってくれません。
しかし過度に楽観的であることは、行動を促せます。誘われなかった飲み会はきっととても楽しかったものだと「想像させる」ことで、脳は人をして飲み会に向かわせられるのです。近くの客がタバコの煙をモウモウさせていることとか、あまり面白い話でもないのを延々聞かされ続けてグッタリするかもしれないとか、悪酔いして2〜3日ひどい目に遭うかもしれないようなことは(十分想定できるはずなのに)、想像からバッサリ切り捨てられます。
(これと関連して、「うつ傾向の人ほど未来を正しく予測できる」という調査がありました。なるほど私は「千葉ロッテマリーンズは今日も快勝するだろう」と愚かにも考えがちですが、うつ傾向のロッテファンであれば「今日の相手の先発予告はまーくんで、ロッテはエースが肘を痛めているんだから、きっと負けるよ」と「正しく」予測してくれるでしょう)。
同じように想像はしばしば過剰に悲観的になることで、私達に行動を促します。最近お腹に少し違和感がある。もしかして胃ガンかもしれない。コーヒー飲みすぎているし・・・(いいかげんな記憶と身元不明の健康情報)。というわけで人は「人間ドックにいって検査する」というような面倒ごとに着手できるわけです。
この想像力を駆使する脳のやり方は理に叶っていますが、ちょっと考えてみるだけでも相当不備があることに気づきます。
まず「何事も楽観的に想像する」やり方で、その未来に向かわせようとするわけですが、同時に先送りを多発させます。未来がそんなにバラ色なら、なにも今面倒な仕事をしなくても良い、ということになるからです。この発想はタスク管理の大敵です。
次に「何事も過度に悲観的に想像する」やり方は、合理的には行動を起こすことにつながるはずですが、おびえさせて行動にブレーキをかけさせかねません。C1にもなっていない人が「神経を抜かれるかも」と心配して歯医者に行かなくなるようなことはしょっちゅう起こります。放って置いてもよくならないので合理的には行動を起こすべきですが、あんまりひどい目に遭うくらいなら、人はもう放っておきたくなってしまうのです。
これもタスク管理的には非常に好ましくありません。しかし頻繁に生じています。「このままではもう間に合いそうにないあああ〜」といって時間を無駄にしていくのです。合理的にはとにかく仕事を進めるべきですが、人は想像される惨事に注意を奪われて仕事が手に付かなくなっていくのです。
何らかの「瞑想トレーニング」のようなものを受けた人は知っているとおり、この種の「間違った想像」をやめることは心を鎮めることに役立ちます。しかしこれがけっこう難しい。ある調査によると、平均的な人は1日の12%をこの種の思考に費やしているそうで、少なく見積もっても毎日1時間はこういう「想像」をしてしまうのが人間なのです。
私は瞑想トレーニングを奨める立場にはなく、自分でもやっていません。私は代わりにもっぱら「タスク管理」に精を出しています。想像する代わりにシミュレートし、想像する代わりにプロジェクトを管理する。そうしたとしても想像力で苦しむことを(行動に駆り立てられてもその行動がとれない苦しみ)0%にはできませんが、ずいぶん違います。
想像が始まってしまって「このままではあの書籍原稿が間に合わないし、週末家族サービスもしなくてはいけないのに、まだプレゼンの準備も終わってないぞ!」と脳内の血流が過剰に動き出したら、「タスク管理」に戻ります。「ここで原稿」「そこでプレゼン準備」「家族サービスの時間もとれなくはない」ということをエクセルで確認すれば、この種の想像をストップさせるために有効なデータを得ることができるからです。
たぶんこれは先の「瞑想」に近い効果を、「瞑想の達人」のようにはいきませんが、得ることにつながっています。