心理ハック
「1番やりたいこと」がいつも「1番やりたいこと」とは限らないこと
堀 たとえば、ルーチンワークのための時間とは別に、細く、研ぎすました創造的な時間の方が、いろんなアイディアが浮かんできて、効率がいいということがある気がします。そのためにも、自分の時間をたとえ5%であれ、「人生の目標」とか「家族」とか「休息」に割り当ててあることを「見える化」しておくことは大事ですよね。
「一番やりたいこと」をやるライフハック
http://journal.mycom.co.jp/series/lifehacktalk/013/index.html
昨日、第13回のライフハック・トークがアップされました。この対談には様々な「仕掛け」と「背景」があって、それらを全部お伝えできればとおもうのですが、紙面にも限りがありますからそういうわけにはいきません。今後はアップされた翌日の金曜日に、いろいろと思うところをフォローしていきたいと思います。
言葉の使い方や結論に至る思考プロセスは違いますが、この対談を通じて思うことは、堀さんのお話はじつにしっくりきます。ということは、私も似たような考え方でいる、ということなのでしょう。
引用したところは冒頭の堀さんの発言ですが、私はこれを後ろのほうで、「価値の相対性」と言っています。ちょっと小難しい言い回しを使ったことを後悔しているのですが、気をつけていないと「一番やりたいことをやることができる時間になると、一番やりたいことなどやりたくなくなります」と言いたかっただけです。
私たちは、「一番やりたいこと(本当にやりたいこと)」と「ある条件下でやりたいこと」とを別のことだと考えたがります。だから「今、部屋が散らかっているから片付けたいと思っているけれど(ある条件下でやりたいこと)、これは本当にやりたいことではなくて、本当にやりたいのはもっと別のことなのだ(英語の勉強=どんな条件下でもやりたいこと)」と考えるわけです。
しかし、部屋をきれいにしてみると、英語の勉強などはしたくなくなっている。なぜならば、英語の勉強という「本当にやりたいと思っていたこと」もまた、何らかの条件下に置かれたとき(たいていは英語ができないことに不利益を感じたというケース)こそ、自覚するものだからです。同様の制約条件がなくなってみると、私たちはその制約下にあってこそやりたかったことを、やりたいなどとはふつう感じません。
ですから、「やりたいと思ったときに、やりたいことをやれ」というアドバイスは、(実践の難しさはさておき)、正しいと思います。少なくとも、「これら一切が片付いたら、あれをやろう」という考え方は、一切が片付いてみると、意欲も消滅しているという体験を重ねることになりそうです。
「書き出すと頭がスッキリする」理由について
最近この件について言及したり考えたりする機会が増えてきました。少々まとめておきたいと思います。
佐々木正悟×堀E正岳 ライフハック・トーク第9回「記憶を脳の外に出せば効率が上がる」でとりあげたテーマですが、「気になっていることを紙に書き出す」「すべて洗い出す」というライフハックは、GTDでもおなじみで、基本中の基本と言っていいほどのものです。
とりあえずはあすなろブログでも、「メタ記憶の解放」という解釈をあててあります。それでいいと思いますが、メタ記憶が解放されると、「頭が空っぽになってスッキリした気がする」のはなぜか。これを言い換えると、一切を書き出して、とりあえず頭が空になったら、私たちの頭は何に注意を向けるでしょう。
私はあすなろブログでは、次のように書きましたが、これは体験的な内観から得た結論です。fMRIなどを使って「スッキリした頭」をのぞき見たわけではないのです。
解放されているのは、メタ記憶です。私たちがGTDやその他の仕事術において、「洗いざらい書き出してみよう」という時に、ただしりとりをやるみたいに、単語を列挙していくわけではありません。
「やらなくてはいけないもの」「準備しなくてはいけないもの」などを、連想的に思い出していくはずです。その時、頭では記憶をただたんに想起しているのではなく、操作しているはずです。
たとえば、何の記録手段もないお風呂場などで、この作業をやると、不安になることがあります。この場合の不安は、メタ記憶的な働きによって引き起こされる感情です。「これで全部じゃないかもしれない」というのは、記憶についての記憶。すなわちメタ記憶です。
マインドマップなどを描きながら、仕事を「鳥瞰的に」整理しているとよく思うことですが、こういうことをしないと混乱してしまう私は、結局、大局的な視点をワンレベル下げる必要があるようです。メタ記憶は記憶に。記憶は記録に。
そうすることで、鳥瞰的な風景を、局地的な図式にして扱うことができます。逆に考えていくとこれはどことなく、構造化して注意力を節約したとしても、すぐに認知資源の限界に達してしまうということも考えさせます。
▼参考
Toodledoの「タグ」と「コンテクスト」を入れ替えました
かなり個人的なライフハックです。
かなり前から、この措置はやらなければと思いながらも、ズルズルきてしまっていたのですが、このたびようやくToodledoの「時間セクション」を「タグ」から「コンテクスト」に移し替えました。
昨日書いたとおり、もともと大橋さんのタスクシュートの影響から、1日のセクションを6つに分け、それぞれに「A」「B」「C」「D」「E」「F」3時間ごとに割り振っていました。これを2時間ごとに変えたのも昨日書いたとおりです。
それと同時に、これまではタグでABCDEFと分けていたのを、「コンテクスト」を使うようにしたのです。
Toodledoの「コンテクスト」はもともと、「どこでそれをするのか?」に答えるためのものです。タスクを処理するには場所があります。本屋で本を買うのか、取引先でミーティングするのか、移動時間なのか。
つまり「コンテクスト」はタスクを空間属性で分類するためのものです。しかし私は、タスクを時間属性で分類する習性がついていますから、ここに「時間セクション」を当てるのが当然と言えば当然でした。
午前中にやるタスクを、同時に夕方にもやる、ということはできないのですから、「時間セクション」は「フォルダ分けの機能しかないコンテクスト」で扱うのに適しています。「複数属性」を同時に持たせられるタグを、これに当てる必要はなかったわけです。
これで「タグ」が空きました。ここにはやはり以前から考えていた、「プロジェクトではないが同じ属性でまとめたい」タスクにつけることにしました。
たとえば「休日前」にやることや「〆切が近いこと」、もしくは「外出時」「実家で」などです。これは「コンテクスト」だったものもあり、「フォルダ」に入れていたものもあったのですが、「複数属性が重なる場合も多い」ためタグ向きです。
「休日前」に「実家で」やることなどは明らかにあります。しかもどちらも「プロジェクト」ではありません。
やっとこのように変えられて、Toodledoもずいぶんスッキリしてきました。なによりも「フォルダ」の項目が激減したのが大きな収穫です。
問題はどんなツールを使っていてもそうですが、いったん決めたルールで使い込んでしまうと、たとえそれが不都合だと知っても、簡単には軌道修正できなくなるところです。今回も、『iPhone情報整理術』やその他の書籍原稿などが押していて、とてもこんな大がかりな軌道修正をするリスクはおかせなかったわけです。
同じ理由でいまだに、SnowLeopardを導入できていません。カスタマイズ系でやりたいことはかなりあるのですが、たんに時間がかかるだけではなく、タスク管理ツールをいじるのは、タスクを滞らせるリスクにもつながりますね。
1セクションを3時間から2時間へ
きわめて個人的な話ながら、数年ぶりに、1日を3時間ずつに区切るのをやめて、2時間ずつに区切り直しました。
1日を3時間に区切るのは、シゴタノ!の大橋悦夫さんの「タスクシュート」による仕様です。仕様で毎日の生活が定められているのはすごくおかしいことかもしれませんが、便利なのであわせていました。
しかし、最近「ライフハック・トーク」で堀さんと対談中に、Googleカレンダーで徹底的に「時間の隙間を埋める」時間管理方法をうかがっているうちに、「セクションを分けるなら、できるだけ小分けにした方が、時間活用力は高まるかもしれない」と思い直し、実行しました。
経済学のジョークに、ピザを6等分しても8等分しても、1枚の量は変わらない、というのがあるそうですが、時間も原理的には同じ事。3時間ごとに分けようと2時間ごとに分けようと、1日の総時間が増えたり減ったりするはずもありません。
しかし、実際にはそうでないからこそ、タスクシュートで大橋さんは3時間ごとに分け、私もそのやり方をToodledoで踏襲していたのです。1日を区切らず、24時間をまるごと「使おう」としても、まったくうまくいきません。部屋ごとに区切られていない大広間で生活するようなものです。人間の時間認識力には限界があって、大きくなるとひどくおおざっぱになってしまいます。
堀さんは対談中、この点をじつに細かく指摘されました。デジタルカレンダーの区切りがデフォルトで30分ならば、1時間のものよりは時間をうまく使える。15分のものがあれば、30分のものよりも、時間をうまく使える。なぜなら、人間の時間感覚はいいかげんなため、「原稿執筆1時間」と割り当てておくと、それが妥当なように思ってしまうからです。「30分」としておけば、30分で書ける内容であってもです。
むろん、縮めればいい、ということにはならないでしょう。しかし、最初は小さく割り当てておいた方が、時間を無駄にせずにすむとは思います。実際私は1セクション2時間としてみてから、多少は一つ一つのタスクで無為に過ごす時間が減ってきました。
より詳しくいえば、セクションの時間が短くなったことで、そこに入りうるタスクがより厳密に絞られるのです。3時間よりは2時間の方がイメージしやすいため、そこでどれほどのことができるかは、想定しやすくなります。「この2時間で、これらをやる!」という期待と決意は、「この3時間で、これらをやる!」という内容よりも、現実的です。
「では1時間にした方がいいのでは?」と思われるかもしれません。実際そうかもしれません。今のところそうしないのは、セクションが増えすぎて管理しづらくなるからです。それに、「1時間をまたぐタスク」はいくつかあるため、(2時間をまたぐタスクはめったにない)管理が少々面倒になるのです。
人が満足する労働条件
月曜恒例の心理テストですが、今回は心理テストと言うよりも、一般的な人々の統計的心理を知識として知っているかを問うテストです。
おそらくアンケート対象となった大半はアメリカ人だと思われますので、私たちの「常識」とはいささか異なっているところもあります。しかしそういうところはあまり深く考えず、気楽にお答えになってください。
▶「人はどんな労働条件に満足するか?」をやってみる