旧ライフハック心理学

心理ハック

欲しいものがあっても一気に買わない方がいい理由

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これは拙著『「ロボット」心理学』に対する、1つの回答になっています。拙著のテーマは、人は「快楽」に「ロボット」のせいで「飽きて」しまうということでした。少なくともあの「iPad」ですら、持つ直前の輝きを、今はなかなか感じられないかもしれません。

この種の例を挙げるのは簡単ですが、「ではどうしたら?」といわれるとなかなか困ります。ジョン・カバト・ジンが示すマインドフルネスは明らかに優れた解決ですが、何というか、もっと年老いてからの解決としたいのではないかと思われます。あなたの現在年齢が何歳であれ。



と思っていたところへ、実に面白い心理学実験が見つかりました。快楽が色あせてしまうのを先に延ばしたければ、味わい尽くさないこと、という方針を示唆しているのです。

Enhancing the Television-Viewing Experience through Commercial Interruptions

この実験では、同じ番組を、コマーシャル入りで見た人と、コマーシャルなしで見た人とを比較し、どちらの人々の方が最終的に番組を「楽しんだか」を検証しているのです。

ふつうに考えれば、コマーシャルなしで見た方がいいように思えます。そういう人が多いからこそ、HDDレコーダーを使って、コマーシャルをわざわざ早送りにして飛ばしてみるわけです。そのための専用の機能すらついています。

ところが、実験の結果では、予測に反してその逆になっていたのです。

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人は、ぶっとおしで欲しいものを味わってしまうと、どうやら飽きてしまうようです。「コマーシャルによる中断」は、その「心的飽和」に歯止めをかけてくれるわけです。

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仕事にはほどよい実感が欲しい

そのころはまったく知らなかったのだが、シーカトリートは、じつはある重要な考えをもとに作られたおもちゃだった。「コントラフリーローディング」(逆たかり行動)がそれだ。これは動物心理学者のグレン・ジェンセンが作った言葉で、動物は手近の皿に載せられた、何もしなくても手に入る食べ物を食べるより、たとえ同じ食べ物であっても、自分の手で獲得することを好む、という考えをいう。(p84)

使う言葉は専門領域によって多少違うものの、これとほとんど同じことはいろいろな専門家が指摘しています。

たとえば「自己効力感」(セルフ・エフィカシー)がそうですし、脳科学者のグレゴリー・バーンズも『』のなかで、概念に専門用語こそ付けていませんが「大切なのはお金ではない。それを得るために何をするかだ(p67)」といっています。(もっとも彼は同じ本の中で、「マルクス主義も結局は金がものをいうのだ(p49)」とも書いています)。


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何かよほど独特の欲望でもない限り、ただひたすら与えられたものを貪欲に消化するというだけでは、満足が得られないのは、経験的にわかることです。ただし、「なぜそうか?」ということになると、あまりわかりやすくはありません。長い生物の歴史の中で、ほとんどそういうことはあり得なかったのが、たぶん理由の一端でしょう。

だいたい、「作業効率∞は気持ちよくない」ということについては、コンセンサスが得られてきているようです。ここから得られる教訓らしきものは、2つあると思います。

1.作業をとにかくゼロに近づけ、報酬をどんどん増やしているのに(仮にそうしたことが可能だとして)幸せに感じられないというのは、おかしなことではない

2.仕事の成果から得られる報酬よりも、作業自体によって充実感が得られるという説は、搾取したい人たちに力を与えるので、その点はよくよく警戒する

2は、このブログのテーマからはみ出していると思いますが、この点に警戒が足りなすぎると、「洗脳」など、他人からいいように扱われてしまいますし、この点警戒しすぎると、「成果報酬」でなければやる気を出してはいけないと思って、かえってつらくなりますので、難しい問題ですが、考えておく必要があります。

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12/18(土)スピードハック総決算2010

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今回のセミナーは少々「高額」と感じられるかもしれません。でも

二人でやります!

・いつもより窮屈でない「贅沢な」会場を使います!

6時間の長丁場!

の、スペシャルセミナーなのです。

佐々木は、ふだん朝10時にどこかへ行き着いている人間ではないので、9:30開場というのは個人的に厳しいのですが、今回はがんばることにしました。

というのも、今回のテーマには私自身が、会社員時代から悩んでいた問題に完全にスポットがあたっているからです。

それは、「これからやってくる膨大な時間を全部無駄にしていく過ごし方を、どうやったら避けられるだろう?」という悩みです。当時の私の感覚からすると、それが出来るなら1万5千円は高くありません。

この悩みを、大橋さんの言葉で表現すれば、次のようになります。

大橋の例でいえば、会社に入った1年目の年末年始の休暇がそうでした。

土曜出勤が多く、週に1度しかない休日も掃除や洗濯などで使い果たしてしまい

自分のための時間というものを持つことができませんでした。

そんなこともあり、8連休という入社以来初めての超大型連休を前にして、

これだけの時間があればもう何でもできるぞ!」という胸の高鳴りは今でも

鮮明に覚えています。


サラリーマンは、時間がない。実はないのは時間ではないのではないかと思っているのですが、実感としては時間がない。私自身がずっとそう感じていて、だからこそ、「自由になるたくさんの時間(10日間とか)」に過大な期待を抱いてしまいがちでした。

自由になる時間をいっぱいとれれば、何でもできるというのは、はっきり言っておそらく幻想です。なにもしなくてすむほどのお金があって、そしていろんな責務・雑務から解放されれば、いまよりずっとすごいことをやれるのに、と思っている方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし私は、そうはいかないと思っています。以前の私であれば、それは私の意志力とか精神力とか根性に問題があるのかとも思っていましたが、そういう問題ではないと思うようになりました。

私自身がある程度、自由な時間を確かに活用できると実感されるようになったのは、ここ1〜2年のことです。これは、シゴタノ!、大橋メソッド、タスクシュートに出会った後のことなのです。だから私はこの手法をうまく幅広くお伝えしたいのです。

12月18日(土)のセミナーは、このようなわけで、参加はサラリーマンの方に限るわけではまったくありませんが、特に会社勤めされている方にこそ、聞いていただきたい話だとも思っています。

▼セミナー詳細はこちら

スピードハック総決算2010

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「反対側の立場に立つ」ことができれば「先送り」も減らせます

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人間は自我を中心に生活している以上、完全に「ニュートラルなものの見方」をすることはほぼ不可能です。

私でいえば、甲子園ではつい「埼玉県代表」(所在地)や「北海道代表」(生まれ故郷)をひいきしてしまいます。「浦和学院」とか「旭川実業高校」に縁もゆかりもないのに、です。

この基本的なスタンスは、細かな知覚に影響を及ぼします。どちらかの高校を一方的に応援していると、その高校の打者のハーフスイングは止まっているように見え、相手校のハーフスイングは振っているように見えるのです。

以上のようなことは、社会心理学者がたくさんの実験によって傍証につとめています。

その残ったタスク、「やること」に決めてありますか? 「やらない」ことに決めてありますか?


自分のことを振り返ってみると、「タスクの先送り」が後をたたないのは、結局この「細かな知覚の歪み」が原因になっていると考えられます。

いつも先送りになるタスクというのはだいたい、「やらない」ことに最初から決まっているのです。その基本的なスタンスが、置かれている状況について「先送りにすべきだ」という方向に知覚を偏らせているのです。

・残り時間(知覚)→とても少ないからこの短時間でやるのはよくない(歪んだ解釈)
・疲労(知覚)→ひどい疲れだから質に悪影響を及ぼす(歪んだ解釈)
・現在時刻(知覚)→もう遅すぎる、睡眠は大事だ(歪んだ解釈)
・明日の見通し(知覚)→明日の午前中なら時間があるしやれる(歪んだ解釈)

もしも知覚が中立的であれば、こうも「先送りこそ正当」という解釈が並んでしまうのは不自然です。

努力すれば「反対側の立場に立ってみる」ことはまったく不可能ではない


つまり、先送りにするというのはタスクを見てから熟慮の末になされる判断というよりは、直感的に決定されてから、理由を並べ立てる行為なのです。

これを避けるために、きわめて異端的ながら、社会心理学者の「ステレオタイプ」を避けるアドバイスを参考にします。なるべく「反対側からものを見る」ように努力するのです。

「先送りする」という決定から見れば、先ほど箇条書きにした「先送りにする理由」はいかにももっともです。しかし、「先送りは絶対にできない」という立場に従えば、「理由」は全部ひっくり返ります。たとえば、

・残り時間(知覚)→少ないが何とかやれるはず(歪んだ解釈)

忘れてはいけないのが、この立場もまた、バイアスがかかっているのは確かだということです。

「正しい」ものの見方をすれば自然と先送りしなくなる、というわけではないのです。「先送りしない」という立場に立って考えれば、それを支える理由を並べ立てることは可能だという話なのです。

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軽度の恐怖症を除去してくれるライフハック

気に留めてもいない人にしてみれば、「何でそんなものが?」ときょとんとして呆れてしまうのが「恐怖症」というものです。実は私は、軽度の「電気恐怖症」なのです。

ガジェットやデジタル家電に囲まれ放題の生活を好むくせに、そうなのです。ピリッという刺激にきわめて過敏で、アメリカで「電気治療」を受けさせられたときには、自分の英語力不足を棚に上げて、猛抗議したことがありました。

担当医は私に謝罪しながらも「たいていの人なら、この電圧では、気づくこともないはずだ」と言いました。私は「そんなことは問題にもならない!」と感情をぶちまけたものです。

そういう私にとって、関東の冬は最悪です。金属を前に立ち往生してしまうからです。不潔症候群の人の気持ちは、本当の意味ではわかりませんが、多少とも推測がつきます。

が、私は数年前に静電気恐怖症からは、解放されました。次のようなグッズがふつうに販売されるようになったからです。

おそらく一般の人にしてみれば、「何でそんなもの」ということになるでしょう。しかしそれはまったく違うのです。これのおかげで私は、「冬」がまったく怖くなくなりました。そうすると、たまに静電気のショックを受けても、平気になってくるのです。

恐怖というものは、どうしてもエスカレートするものです。グッズがエスカレートに歯止めをかけてくれるなら、こんなにいいことはないのです。私はたぶん、上記のストラップを、10万円でも買ってしまうでしょう。(ここが病的なのです)。それが500円で手に入る。

グッズでちょっとした不安や恐怖と折り合いを付けるというのは、実はけっこうふつうの対策です。この場合にもっとも気をつけるべきことは、自分の知りたい効果をはっきりと見て取れること。

静電気であれば、「もうこの金具に触れてもビリッと来ませんよ」というシグナルが明確であることです。そうでなければ、頭の中で不安を増大させている状況に変わりないので、意味をなしません。

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