旧ライフハック心理学

心理ハック

人は「失いたくない」からがんばる

教師たちに(生徒たちにではない!)事前に報奨を与え、クラスの成績が上がらなければそれを取り上げると脅すことによって、生徒たちの成績は実際に上がったのだ。

報奨(ごほうび)は結果に対してより“事前に”与えたほうが効果的–ハーバード大の研究より

なるほど、という研究結果です。

確かにヒトの(おそらく人には限らない)「損をしたくない」という感情と「得をしたい」という感情にはギャップがあります。そんなに食べたくないものであっても、バフェットなどにいくとつい食べ過ぎてしまうのが人間というもの。「無料で食べられる」ことが確保されているのを残すのは損だ、という心理が働くせいでしょう。

この非対称性を利用するというわけでしょう。作り話ですがプロ野球を例にとりましょう。

・今年ホームランを30本打ったら年棒を1億にしてあげよう
・今1億円あげる。でも今年のホームランが30本未満ならいくらか返すように

下のように言われた方が、必死になりそうです。そもそもお金を少しずつ使っていってしまう恐れもあります。(あとでは返せなくなる)。

いずれにしても「ご褒美作戦」に違いはありませんので、ご褒美を与えたり取り返したりできる「権力者」の存在が欠かせませんし、1人でできるかどうかは疑わしいマインドハックですが、うまくやればマーケティングなどに応用できそうです。(と思う人は多いでしょう)。

ある意味では一時話題になった「フリーミアム」はこのやり方です。無料でインストールしてしまったアプリが便利だったりすると、もう手放せなくなる。(先に報酬が与えられている)。だからその便利さを「失わないため」にお金を払うわけです。「試用期間」は良心的な手法ですが、そういう心理も「図らずも」にせよ「役だって」いるはずです。

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リニアなプロジェクト管理ツールが欲しい

私はプロジェクト管理ツールとして、だいたいのところOmnifocusを使っていて、これに代わるものはなかなかないと思っています。

が、同時にTaskchute型のプロジェクト管理ツールというものを最近しきりと切望するようになってきました。

以前から私にはそういう願望があったのですが、以前よりもシンプルな内容ながら、汎用性のあるものです。とりあえずここでは便宜的に「ブックシュート」と名付けておきます。

読みたい本がたくさんある人向けのイメージですが、たとえばいま、100冊読みたい本があるとします。これをエクセルに並べるイメージです。

各書籍について「見積もり欄」(単位は「分」)とし、「読みたい日付」を入れます。その際基本的には

・何日で読めそうか
・何日で読み終わりたいか
・何日以内に読まないと意味がないか

を検討することになります。「見積もり」には必ずしも正確な見積もりだけが入るわけではなく、〆切や願望など、葛藤が反映するのはTaskchuteユーザーにはおなじみのことです。

私は一応物書きでもあるため「ある時期に読まないなら、読まない本」というものを読まなければなりません。こういう書籍はタスクシュートでいうところの「カベ」、つまり予定になります。こういう本は読みたいかどうかに関わりなく、「100冊」の中でも上の方にこざるを得ないことになるでしょう。

「終了予定」欄には「終了予定時刻」よりも「終了予定日」つまり、「ここにあるすべての本を読み終える頃にはあなたは89才になっているでしょう」くらいの情報のほうが意味があります。

同時に「ペースとして明日は読書に130分、来週の日曜は180分」といった「読書だけにあてる見積もり時間」を示した方が意味があります。「それだけ時間をかけたとしても、何年間は読もうとしている書籍ですら読み終わらない」という情報です。

この情報は、ただの情報です。自分にしか意味はないし、いかように変えることも可能です。そもそも見積もり時間は不正確なものですし、そんな先の日にやることが分かるわけでもありません。それに私はわかりやすそうだから書籍をサンプルにあげただけで、このツールを蔵書管理にしたいというわけでもありません。

私としてはこれを引っ越しにあてることを最初に思いついたのです。今私はOmnifocusで引っ越しプロジェクトをシミュレートしているのですが、個人的には少し使いにくい。なぜ使いにくいかと考えたところ「アイデア」など不要な一方「すでに外部的に決まっているモノや事項」に左右されるからなのです。

(不動産屋さんに連絡するとか、自宅の物件価格を見積もってもらうとか、実家の父母に連絡するなどは、いずれも全くアイデアではなく、外的要件です。これらは順番をうまくやるとスムーズにいくし、何かと割り込み(待たされ)で順番が狂い、それにつれて時期も狂うので、リニアに管理して、「そうするといつになるか?」をたえず把握しておきたくなるわけです)。

書籍と同様、外側にすでにあるモノを動かす場合、発散系のツールを使う必要はあまりないのです。アイデアなどどうでもよくて、現実にあるピアノと椅子とかをいつ、どのような手順で動かしていく(と不便にならない)かが問題になるからです。問題のほとんどは

・かけられる時間
・前後依存関係
・時期
・コスト

ということになるので、やるべきことをさっさとクローズし、リニアに管理したいところなのです。そういう意味では書籍でもそうですが「支出欄」を追加しても面白そうです。

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夢想家タイプの先送りをライフハックする


本書で、完璧主義的な先送りタイプの次に取り上げられているのは、夢想家タイプです。

このタイプの考え方は分かりやすいものです。「でも、あんな面倒なことをするのはいやだ!」というものです。もちろんそうです。誰だって面倒なことをするのはいやなものです。

ただ、結局やらなければならないなら…とか、誰かがやらなければならないことだから…といった理由で人はなんとかだましだましでも、地味で気乗りのしない作業に取り組みますが、夢想家タイプという人たちは面白いもので、そういう風には考えられないのです。

夢想家グズ人間のあなたは、受け身のまま快楽を求めようとする傾向があるので、注意しなければならない。テレビを見たり、娯楽小説を読んだり、石の上のとかげのようにhなたぼっこする間に、時間や目標達成にかかるプレッシャーが通りすぎるのを待っていることも多い。ときにはリラックスすることも悪いことではないが、その時間があまりに多くなると、あなたの自尊心と幸福が犠牲になるのだ。(p116)

このように過ごすことが可能だということは、心のどこかで「ぼんやり待っていればそのうち問題を誰かが解決してくれる」とか「自分がやらなくても何もかもうまくいく」と考えられるような独特の楽観主義があるからでしょう。

同じ「先送りグセの人」でも「完璧主義者」とどんなに違っているかによく注意して下さい。完璧主義の人はあらゆることを「自分で」完璧にやろうとして
、そうできないから先送りにする。夢想家は面倒なことに「自分は」手がけずとも、最後はうまくいくだろうしうまくいって欲しいと願って仕事に手がけないのです。

先送りといってもそうする理由は様々なのです。

では対策はどうでしょう? 完璧主義を扱ったエントリではTaskchuteを私は奨めていますが、夢想家にも同じツールを奨めます。問題を引き起こす心理的な要因は異なっているのに同じツールを奨めるのは無責任なようですが、闇雲に奨めているわけではないのです。

夢はあいまいだ。私たちがのぞむもののぼんやりしたイメージに過ぎない。トロフィー、豪邸、百万ドルの小切手、自分を尊敬のまなざしで見つめてくれる人、南の島の誰もいない海岸などがその例だが、まるで映画のように豪華で壮大なことがあっても、それが断片的であることに変わりはない。たとえば自分の仕事の頂点に立つことを夢見るとき、自分が起こした奇跡の詳細な場面や人からの賞賛、味わうスリルも思い描くだろう。しかしそのときに鍵となる重要な場面が必ず抜けている。それはその奇跡を起こし、賞賛され、スリルを味わう前にやっている、およそ魅惑的とは言えない地道な作業なのだ。(p117:太字は佐々木による)

したがってその「地道な作業」を「現実の」どの時間帯に取り組むかを計画しなければなりません。Taskchuteはこの用途にうってつけです。どのタスクに、どの手順で、どのくらいの時間をかければいいかを、可視化してくれるツールだからです。

かつて夢想家グズ人間であったとしても少しもおかしくない夢見るリアリストはTaskchuteを使ったセルフマネジメントを次のように要約しています。

screenclip-16.png
第一領域~第四領域の分類が意識されれば1つ1つの行動が変わります。

第一領域には再発を予防する手を打ち、第二領域には全神経を集中させ、第三領域は短縮する工夫をし、第四領域は減らす努力をするのです。

7つの習慣×TaskChute2!これでやっと完璧な第四世代の手帳が作れる!! | 旧jMatsuzaki

これは有名な「7つの習慣」をTaskchuteに支援させて実行に移そうとしているリアルタイムなレポートです。『グズの人にはわけがある』の中でも、全く同じことが奨められています。

夢とちがって目標はもっとまとまった企画だ。特定の目標に向かって、特定の段階を、特定の時間枠に沿って進む。夢は目標におきかえるまでは実行することができないので、真剣にとらえている夢があれば、それを目標におきかえる努力をすることだ。(p117)

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完璧主義タイプの先送りをライフハックする

『グズの人にはわけがある』では先送りを6タイプに分けています。


・完璧主義タイプ
・夢想家タイプ
・心配性タイプ
・反抗者タイプ
・危機好きタイプ
・抱えこみタイプ

この6タイプそれぞれに分析し、しかも「先送り癖」を克服するための自己変革プログラムまで紹介してくれています。つまり本書はゆるやかな自己啓発書ということになります。

著者らのカウンセリングの実際に基づく方法論であり、内容は良心的かつ現実的ですが、それでも自己啓発書の逃れがたい宿命として、心構えが本の中に書いてあるのみです。つまり本を閉じて心構えのことを忘れてしまうとそれっきり。著者にはそれ以上どうしようもないのです。

こういう本を読むとちょっと考えるのが、本に書かれている「自己変革プログラム」を半強制してくれるようなツールがあったらどうかということ。もちろんツールなんて無視することができますが、日常にダイレクトに分け入ってくるリマインダーのようなツールが「心構え」の実行を強制してくれれば、効果がある人には効果があるかもしれません。

Taskchuteで完璧主義を克服する


たとえば6つのタイプのうちの1つ、完璧主義克服のためにTaskchuteを使うこともできそうです。

『グズの人にはわけがある』にはかなり具体的な「完璧主義克服法」が述べられています。たとえば次の2つがそうです。

1.完璧に仕上げるために、過度の時間とエネルギーを費やしてしまった例を、最低二回思い出す

2.完璧な仕事ができない不安からまったく手をつけなかった、あるいはギリギリになるまでしなかった例を最低二回思い出す(p74)

これを実行することは非常に有効です。しかし問題は「思い出す」という方法であることです。本を読んでいる人の過半は思い出さずにここを通りすごし、翌日には損な方法のことは忘れてしまうでしょう。

また「過度の時間とエネルギー」という下りにも問題はあります。「過度」とは何時間でいいところを何時間かけてしまったことを指すのでしょうか? 普通の人がジャッジしてくれるのではなく、完璧主義者が自分の時間の使い方を「思い出す」だけであるところに注意して下さい。

完璧主義者にTaskchuteを使ってもらいましょう。すべての仕事を完璧にしようとタスクリストを作って、必要十分な時間を見積もりに入れる事になります。終了予定時刻はおそらく翌々日の夜中にもなるでしょう。つまり不可能なことをやろうとしているということがあまりに明らかになるはずです。

また、完璧主義者はやろうとしていることの数もそもそも多すぎるので、実際にはやろうとしていることの1/5も終わっていないことも分かるはずです。「思い出す」必要などなく、記録にそのことが残っていきます。

つまりTaskchuteを毎日使い込むだけで、必要な発想の転換や、時間の使い方について「思い出す」こと以上のメリットが得られます。書籍にあるような「話し方を変える」を実践せずとも完璧主義を緩めることができます。

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人づきあいは面倒だが、孤独は耐えがたいという人のために

表題のような人は大変「困った人」のように思えるかもしれませんが、そんな事はありません。両者を極大までおし進めれば、誰だってそうだと言えます。

たとえば人間関係の幅を最大に広げ、ありとあらゆるタイプの人と、野放図につきあう義務をおうとなれば、相当の人間好きでもさすがにうんざりするでしょう。賑やかなところが好きでも、人混みはきらいという人はたくさんいます。

一方比較的孤独が平気という人でも、無人島に島流しになって、あとは一人で一生やらねばならないとなったらなかなかな大変です。寂しいなどとは言っていられないかもしれず、言葉も忘れてしまうでしょう。

したがって

孤独感 < 友人関係 <人間関係一般

という両極の間に入ってくるのは普通のことです。比較的「困ったこと」になるのは、自分が求める「程良さ」と現実との乖離が大きい場合です。比較的人恋しがり屋なのに人間関係に恵まれていない場合と、比較的孤独癖が強いのに、いろんな人に関わられることを拒みきれない場合です。

ここまではまだ簡単な話なのですが、寂しさとうっとうしさの狭間で少々深刻な問題に発展するのは、1人の人間の「孤独癖」と「寂しがり」が変動するからです。たとえば体調の変化次第でも変動します。

たとえば扁桃腺が腫れると「孤独癖」が強まる人がいることは、心理学の研究で明らかになっています。これは病原菌に対して免疫反応が生じるため、社会的交換に割くエネルギーが不足するからです。

人と仲良くやる気分じゃない。放っておいてくれ。というのはなにも強がっている訳ではなく、身体内部の闘争で忙しいため、「外部」にまでエネルギーを割いていられないという感覚の露出なのです。脳は身体に休んでいて欲しいとも言えます。

しかし同時に扁桃腺が腫れると急に人恋しがる人もいるでしょう。こちらの方は『孤独の科学』(河出書房新社)で強調されていた理屈です。身体が弱っているため、社会的援助の必要性を脳が意識しているのです。

どちらの態度もそれなりに合理的なわけです。どのような気分になるかは、それこそ病気にでもなってみないと分かりませんし、病気の重さにもよるでしょうが、体調が悪くなればふだんとは他人に対する気持ちも変わるであろうことくらいは知っているでしょうし、意識しておいて損はありません。

「アドバンテージを見る」


やや「心構え」的な話になってしまって、いまひとつ「マインドハック」でないのが我ながら残念なのですが、私は「アドバンテージを見ている」という表現が好きです。サッカーなどで、反則された側が有利な状況にあるので、試合を止めずに続行している状況などを指します。

つまり「いつでも選択権を行使できるが行使しない」というような状況です。株式投資などで、含み益が大きいときも同じような状態だと思います。「利益確定」を待てる訳です。

体調が悪いときには、この「アドバンテージを見ている」を人間関係で意識すると、わざわざ調子の悪いときに人間関係でがんばる必要が減るし、人恋しさに煩悶せずにすみます。つまりちょっとやそっとで離れることはない関係者のことだけを意識するのです。

ブログを基本連日更新していたり、SNSなどで高頻度で情報発信する人が、どうしても休む際にはとくに留意すべきことです。休めばいろいろなアクセスが下がったりするでしょうが、休んでも変わらずアクセスしてくれる人たちとの関係は、元気になった際にまた更新や発信を再開すれば「アドバンテージを見ている」になります。

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