ライフハック心理学

心理ハック

427 タスクシミュレーション

2008-05-09(金)の、Lifehacking.jpさんの記事より。

とても忙しい仕事をいろいろかかえていたとしましょう。その中でもタスク A はより緊急だけれども重要性としては2次的、つまりは締め切りがあるタスク。それに対してタスク B はタスク A と同じほど急いでいるけれども、A ほどではなく、しかし重要な用件です。

こうした、あちらが立てばこちらが倒れるという2重拘束の状況を私は心理学の用語を勝手に使ってダブルバインドと呼んでいます(正確ではないかも)。
能率を一気に押し下げるダブルバインドの危険
http://lifehacking.jp/2008/05/the-danger-of-double-binding/

まずは「ダブルバインド」という用語について。実は正確かどうか、私にも判断がつきかねます。しかし、この問題は私なら、「葛藤」でいいのではないかと思います。特に、「葛藤」の中でも「接近=回避の葛藤」です。

接近 = 回避の葛藤【セッキンカイヒノカットウ】
approach-avoidance conflict
 #レヴィン(Lewin, K.1935)による#コンフリクトの分類の一つ。同一場所に正の#誘発性(誘意性)と負の誘発性の両方の目標が同時呈示されたり,同一対象が正・負の誘発性を有する場合に生じるコンフリクト。生活体は目標からある地点までは目標の正の誘発性が強いため,目標に接近するが,目標に近づくと負の誘発性により目標から回避しようとし,決断できない状況に陥る。
[株式会社有斐閣 心理学辞典]

つまり、この例で言うなら次のような状況。

Lifehacking.jpさんにも解決策は示されているのですが、私自身のことを考えてもみました。私はこれを、タスク・シュートというツールを使って解決しています。

現在時刻は11:32です。今、このブログをまだ書いているわけですが、すでに遅れがちですので、すぐにもメルマガを書き始めなければなりません。最も「メルマガを考える」時間が6分ありますから、これを書きながら「考える」ことで遅れを取り戻そうとしています。

本題に戻ります。

どちらを選ぶかで困っているTaskAとTaskB。現状の私にとって、

A=メルマガを書く
B=『Sハックス』(原稿執筆)
です

Aは今日中の約束で、もうあまり先送りにできません。ただし、本を書くことに比べれば、重要性は「二義的」と言っていいでしょう。

一方Bは本の原稿なので、まさか今日が〆切ではありませんが、本日分のノルマがあります。だから「ちょっと余裕あり。しかしAより大事」です。まさに、「能率を一気に押し下げるダブルバインドの危険」で指摘されているとおりの状態です。

ここで私は、とりあえずAを午前中に終わらせ、午後の早い時間帯にBを当てています。大事なことはしかし、この並べ方でなはないのです。

大事なことは、どうタスクを並べ、Aにどのくらいの時間を使って、Bにはどのくらいの時間を使えば、その後どのような現実を自分が得ることになるのか。その見通しを見ることができる点にあります。つまり、選択ができ、しかも選択の結果を鳥瞰できる立場に、自分を置くことです。

実際、BとAをひっくり返すこともできますし、そのシミュレーションもできます。途中で気が変わったら、またひっくり返してもよいわけです。あるいはサボってマンガを読んでもOK。このように、どう組み合わせるのも時間があれば自由。ただしその結果をリアルタイムで把握するのです。

この問題と、問題解決の方法は、ヒューリスティックスなものです。完全解答はなく、その場その場で最適解と思えるものを、選択するしかありません。「私は誰と結婚するべきか?そもそも結婚するべきか?」という類の問です。

ヒューリスティックスな問には、直接的な回答を誰かから得るわけにはいきませんし、解答を出すための公式もないでしょう。しかし、

Aという選択をしたら、A’という結果を得る
Bという選択をしたら、B’という結果を得る

と、選択とその結果を見せてもらうことで、選択決定のための意欲を刺激され、見通しがぐんとよくなります。結婚を例にとるなら、

あなたはこれから、A夫と結婚すれば、未来はこうなるでしょう
B司と結婚すれば、こうなるでしょう
結婚しなければ、こうなります

といったシミュレーションを示してもらえれば、たとえこれが百%完全な未来予測でなくても、選択と意志決定のための、新しい展開が開けるはずです。

以上の話は結局、Lifehacking.jpさんが示されている第一の解決策に、ほぼ沿ったものと言えそうです。

自覚する:ダブルバインドに陥ると、ただ単に忙しくて疲れているという以上に急速にエネルギー(気力)が減退していきます。まずは、「ああ、ダブルバインドに入っているな…」と自覚して、心理的な罠にからまっている状況を認識します。けっこうこれだけでも、焦りが減って、落ち着きを取り戻せることが多いです。
http://lifehacking.jp/2008/05/the-danger-of-double-binding/