心理ハック
脳は新着メールを喜ぶ?
- 2009年07月09日 (木)
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先日、『1日1箱』読者の方より、次のような質問をいただきました。
脳は新着メールを喜ぶ、という内容がありましたが、なぜ脳は新着メールを喜んでしまうのでしょうか。確かについついメールをチェックしてしまいます。
これに対して、次のようにお答えしました。
「よい結果をもたらしうる枠組みにおける新規の刺激に、脳は反応する」という性質があるからです。
最近ではこの好例として、なんと言っても『』があげられるでしょう。
「村上春樹作品」という「読むとよい結果をもたらしうる枠組み」における新規の刺激に、多くの人の脳が強い反応を示したのです。もちろんこのような成果を得るには、かなり多くの人の脳が、「村上春樹はおもしろい」という枠組みを持っている必要があります。
それでは、新人のミステリー小説がバカ売れするような現象が説明できない、と思われるかもしれませんが、そうではありません。その場合には、「ミステリー小説」という枠組みに好感を持っている脳の人(つまりミステリー小説ファン)が、その新人の「新規の刺激」に反応したのです。こういうケースでは大きく2つの可能性が考えられます。
・非常に典型的な「ミステリー小説」としてよくかけていた(枠組みの延長線の新規刺激)
・型破りな「ミステリー小説」として可能性を示した(枠組み自体を意識させる新規刺激)
いずれにしてもまず人は保守的だということです。基本的に「好きな枠組み」にまつわる刺激は好きである。「村上春樹」という枠組み、「小説」という枠組み、「ライフハック」という枠組み、それから「佐々木正悟」という枠組み・・・。
が、人の脳はものすごく記憶力がよいので、いくら好きでも全く同じ刺激を何度も提示されては、「すぐ飽きる」のです。いくら「村上春樹」が好きでも、毎日毎日『ノルウェイの森』ばかり読んではいられません。もちろんそういう人もいるでしょうが、少数派です。
そこで、「昔なじみの好きな枠組み」の「見たことのないもの」を求めるしかなくなるわけです。考えてみるとこれはかなり「狭き門」です。そういうものがあれば、すぐに飛びついて、すぐに消費してしまうはずだからです。
そこでメールに戻りますが、メールはもちろん、親友からのメールとか、お金が振り込まれた通知メールとか、恋人からのメールとか、「好きになれる刺激に満ちた枠組み」です。それの「新着」となれば、これは飛びつかずにはいられません。だからこそ、朝一番にチェックしていてはいけないのですが。
なお、メールの質問は続きまして、
しかし、メールがいつもよいお知らせとは限りませんが。
とありました。そのとおりです。恋人から来たメールでも、「別れたい」ということかもしれませんし、銀行からのメールでも「お支払い日の通知」かもしれません。あるいはお客様からのクレームかもしれません。
しかし、だからこそいいのです。「よい刺激」と「悪い刺激」がランダムに提示されると、ますます「新着」が気になるということは、行動心理学で実験済みです。「悪い刺激」に興奮させられ、「よい刺激」に興奮させられ、脳はますます「新着メール」に興奮するようになり、そこでたまに「すばらしいお知らせ」が届くと、まるで「メール中毒」のようになりうるのです。
「村上作品」にしても、いつもいつも「最高!」「すてき!」「感動!」ばかりだったわけではないはずです。むしろいやな気分になったり、つらい気分になることもあったでしょう。しかしそこに、「よい気分」人させる刺激が挟み込まれる。そうなるとますます離れがたくなるのです。
繰り返しますと、だからこそますます、朝からメールチェックすべきではないのですが。もちろん、それ業務の中心であるなら、仕方がありません。
なお、こうしたことをとことん考えて書いてみたのが、拙著『夢中の法則』です。私はその中で、次のように書きました。これは、上記でいっていることと、ほぼ同じ事です。
退屈を払拭するためにもっとも必要なものは、よく知っていることに関する「ニュース」なのだ。実際この退屈回避戦略は、誰もがすでに実践している。退屈した人は休日に新聞を開き、テレビをつけ、ニュースを見たりワイドショーを見たりするだろう。これらはみな、よく知っている事柄に関する「ニュース」のパッケージだ。