ライフハック心理学

心理ハック

思考を整理することのメリット


最近、「ライフハック」とはつくづく「ダウンサイズ」と関係がある、と思っていたところへ、タイムリーにも「頭脳と生活をクリアにする 11 の整理術」という記事があがりました。(via Lifehacking.jp)。

ところで私の主題でもあるMindHackにおいて、「ダウンサイズ」とは何を意味するでしょう? いくつかのアプローチがあると思いますが、まずは真っ正面から「タスクリストを作って頭の中を空にする」という方法論のメリットに当たってみます。「からっぽ」は究極のダウンサイズでしょう。

そもそも思考の整理とは?

Lifehacking.jpの記事の最後に、次のような一説がありました。

こうした内的独白にメスをいれて、手帳にそれをはき出してしまうだけでも、思考の整理につながるのではないかと私は思っています。
この記事、言い換えるなら「散らかった部屋」「散らかった思考」というのは、実は散らかった人生なのだということだともいえます。

タスクリストに限らず、「内的独白(おそらくはネガティブな)」等を「書き出す」ことのメリットはよく強調されていますが、これはいったいなぜでしょう? 私はこの理由を、「思考内容は伸縮するから」と考えています。

「時間」もそうなのですが、マクロな意味での物理的知覚をもたらさないものは、心の中では伸縮するのです。伸縮自在ではありませんが、簡単に巨大化したり、場合によっては消えてなくなってしまうこともあります。そのため「思考の整理」は「モノの整理」と比べて非常に簡単に済む場合と、非常に難しくなる場合とがあります。

注意を払ったタスクは巨大化する

思考内容の伸縮性について、注意を払った対象は、巨大化する傾向があります。「時間」に注意を集中すれば、「1分」が長くなるのはよく知られています。注意した対象は、視覚の中央に位置が移動し、解像度が上がり、相対的に大きく見えます。注意を払ったタスクは、他のタスクよりも重要そうに見え、長いこと注意していると、難しそうに思えてきたりもします。これはまるで、部屋の中の特定の「物体」が巨大化して、掃除しても部屋の空間を奪ってしまうようです。

ここには相関関係があり、注意を要求してくる対象は、相対的に重要そうに思え、思考の内部を占拠し始めます。あなたのお母さんが、怒りに満ちた声で、あなたの声を呼ぶところを想像してみましょう。たいした用事でなくとも、なんだかそれは、妙に「重要性」を帯びた出来事のように聞こえてきませんか?

ツールで思考を整理するメリット

したがって、「やらなければいけないこと」や「考えなければならないこと」などを、相対的なサイズにとらえ直すことは、メリットがあります。勝手に巨大化したりするのを、許すべきではないからです。

頭の中を、ある特定の「心配ごと」が占め、それが注意を要求し、それに注意を払ううち、非常に重要かつ、手に負えないほど大きな出来事に思えてきたりします。これを紙に落として見たり、他の事柄との関係図を明らかにするうち、その本来の大きさ、重要度、位置づけが定まるはずです。紙に落とされれば、勝手に巨大化したりはできなくなるのですから。