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「共感」と「同情」の共通点と相違点について述べよ-臨床心理ノート

先週に引き続き、第2回目です。

当面は、「模擬テストの例題」を中心にアップしていきます。先週申しましたとおり、この問題の背景に、知っておくべき知識が控えています。その周辺の事情まで詳しくなった方が、「やるべきことが分かるし言うべきことも明らかになる」のは、もちろん言うまでもありません。

【問題】

「共感」と「同情」の共通点と相違点について述べよ

【方針】

一般的に考えても、臨床心理テストの回答にはなりません。「共感」はempathy、「同情」はsympathyからの訳語であって、しかも英語のempathyはおそらく造語で、心理学用語とみなされてきたことを踏まえて答える必要があります。

ですから、ややこしい話ではありますが、「同情」と「共感」という単語の一般的な定義は、頭の隅の方に追いやってみてください。消し去る必要はありませんが。

▼「共感」について

・「共感」とは自分を失わず、相手の側から相手の身になることができる能力
「自分を失わない」という点がポイントで、これが「同情」と対比される部分です。そして「相手の内側から」というのも同様に、重要なポイント。ここも「同情」と対比されます。

・臨床において「共感的理解」が欠かせないと言われている
このテストにおいては、「共感」>「同情」です。「共感」の方が「同情」よりよく、臨床心理士に欠かせない能力とされます。

・「共感」は「感情移入」ともしばしば置き換えられる
物語などの主人公に「感情移入する」ということがあります。このように、「共感」はたんに感情的理解だけでなく、知的、価値観的理解を含むとされます。「同情」が特定の事件に対する反応を共有するのに対し、「感情移入」は長いスパンにおける人生観などまで共有する点に留意しましょう。

・「共感」の重要性は、C・ロジャースの「共感的理解」などに根拠を求められる
というわけで、ロジャースを一冊くらいは読んでおきたいところです。

▼「同情」について

・「同情」とは、相手を同一視し、自分の側から相手の気持ちや感情を推し量ろうとすること
「共感」と共通しているのは「相手の身になる」ことを目指している点。違っているのは、「共感」が「相手の側から」であるのに対し、「同情」は「自分の側から」だということ。

・「同情」では「負の感情」に巻き込まれやすい
一般にクライアントは悩みを持っているので、相手の感情に自分の感情をあわせていくと、一緒に「負の感情」に巻き込まれることになる。

▼追記

私が最初にこの問題について習ったのはアメリカのクラスだったので、当然sympathyとempathyのちがいについてでした。どうもあまり納得がいかなかったのをよく覚えています。

ましてこれを「同情」と「共感」と訳すと、いよいよ納得しがたいものに見えてきます。たとえば広辞苑によると、「同情」は「他人の感情、特に苦悩・不幸などをその身になって共に感じること」ですし、「共感」は、「他人の体験する感情や心的状態、あるいは人の主張などを、自分もまったく同じように感じたり理解すること」です。大した違いがないようにも読めます。

ただここを詰めていくと、どうも「共感」には「知的理解」を伴うところが異なるようです。「自分を失わない」という冒頭の条件も、「知的理解」を考慮に入れれば、多少は理解しやすくなるかもしれません。「同情」には確かに「知的理解」という意味は薄く感じられます。そう考えると、「共感」というより「共感的理解」とした方がいいかもしれません。