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心理ハック

娘を「スキナー化」しました

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スキナー化というのはつまり、寝る前に泣きわめく声量が日に日に増してくる娘を、放置して泣き止ませるという戦略をとってみただけです。ま、ドア越しに気をもみつつ様子を見守っている間抜けな両親がうろうろしていたわけですが、それでも抱き上げたりあやしたりは一切しない。

すると、驚いたことに、日に日に声量は下がり、4日目にして全く泣かなくなりました。ベッドに置いたとたん、指をしゃぶってそのまま寝入ってしまうのです。狙った結果ではありましたが、やっぱり驚きです。Skinnerすごいな。

最初、娘は怖い夢を見て泣くようになったのだと思う。二歳の娘にとって、世界は恐ろしいほどのスピードで広がっていく。けれども、夜を重ねるうちに、娘はただ、抱かれたいために泣くようになった。

うちの娘は2歳ではなくまだ8ヶ月ですが、「抱かれたいために泣くようになった」点ではなんのかわりもありません。快適な刺激を求めて行動を起こすのは動物の常。とすればやれることは?

「あの子をスキナー化したほうがいいんじゃないかしら?」と私は切り出した。
「どうしたほうがいいって?」
「スキナー主義の原理を使ってあの子の習慣を断ち切ったほうがいいと思うの。あの子のところに行って抱き上げるたびに、スキナーが正の強化と呼んだことを私たちはしているわけ。私たちの反応を減らして、最後には止めて、彼女の行動を消去しないといけないわ」

口に甘いチョコを、勉強前のストレス緩和のために食べるまねをしていると、その行動は2回でパターン化します。これが強化。努力してそのチョコを少しずつ減らしていって、最後には止める。これが消去

我が家ではこんな心理学的会話を交わしたわけではありませんが、やろうとしたことは全く同じでした。ただし、「徐々に減らす」のではなく、「一気に絶つ」ことを私は主張しました。経験的にその方が、楽に消去できると思ったからです。

「僕にはわからない。いったいこれであの子にあの子に何を教えられるっていうのか」
「朝までずっとひとりで寝ること」
「つまり、助けが必要なときに僕たちが来てくれないってことを悟るんだね。危険があるとき、危険が感じられるとき、僕たちはそこにいないってこと。僕はそんな世界観をあの子に与えたくないよ」

いかにもアメリカ人のパパらしく、娘にアマアマですね。それでいて、上手な比喩を使って弁も立つ。きっと、芝居がかった調子で、まくし立てるような英語を話したことでしょう。何度も聞いた覚えがあります。

もちろん我が家では、こんなやりとりは交わしていません。アマアマな父親が、提案した側ですから。「世界観」は大げさだと私は思っています。本当のところはわかりませんが、「蛇は邪悪な生き物」というような、過剰な投影が感じられます。ここには異論があると思いますが。

それでも、この議論では私が勝ちを収めた。私たちは娘をスキナー化することにした。ともかく、自分たちが休むために。最初はつらかった。娘が「ママ、ママ、パパ!」と叫ぶのを聞きながらベッドに抱き下ろし、かわいい手が闇の中に差し伸べられるのを見なければならない。けれども私たちはやり通した。その結果—このやり方は魔法のように効いた。あるいは科学のように。五日もしないうちに、娘はまるで睡眠発作を教え込まれたようになった。ベビーベッドのシーツにほっぺたをつけるいなや眠りに落ち・・・

うちの娘は喋ることができない分、著者たちほどはつらくなかったですが、それでも初日はワンワンでした。が、おなじく五日もしないうちに、魔法のように、あるいは科学のように、一瞬で眠りに落ちるようになりました。

もちろん、遺伝子が個人によって異なるので、この方法が効果を上げるという保証などできませんが、「随伴強化を停止すれば、学習された行動は消去される」というスキナーの発見を、ことあるごとに思い出す価値はかなりあります。

私たちは平穏な夜を取り戻した。

そして我が家は野球中継を。