ライフハック心理学

心理ハック

スクリプトを止める

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ジャッキをモチーフにした、昔ながらのジョークがあります。タイヤがパンクしたので、取り替えようとしたところ、ジャッキがないことに気づいた男が、ジャッキを借りるために隣家を訪れようとします。

しかし、道々男は勝手に想像してしまいます。「貸してくれなかったらどうしよう?」「もしかしたら居留守を使われるかもしれない」。そんな想像を巡らせるうちに、だんだん腹が立ってきます。

そして、隣家にたどり着いた時には、すっかり怒ってしまって、呼び出した相手をこう怒鳴りつけます。「頼まれたって、おまえのところのジャッキなんか、借りてやるものか!」

これにはいくつかバリエーションがあるのですが、基本は同じで、想像上の相手に勝手に腹を立ててしまう、男の滑稽さを笑っています。しかし、こんなにあからさまに滑稽な人は少ないでしょうが、多かれ少なかれ私たちはやってしまいがちな話なのです。

人は、想像上のストーリーに感動したり激高したりできる動物です。疑心暗鬼などというのは、全部これです。たとえば、夫婦喧嘩の真っ最中には、頭の中で罵りあうことが少なくありません。想像上のシミュレーションで、感情が高ぶってしまうわけです。

むろん、そういうシミュレーションが100%間違っているとは限りませんが、90%くらいは的外れです。なにより、実際にけんかする前に、想像の中でけんかするというのは、精神的には無意味な二重苦です。そのけんかを無制限に繰り返していれば、無間地獄です。

やっかいな問題。気持ちの高まりは「物語」によって簡単にエスカレートします。止めたいと思っても、止めるのはそう容易ではありません。

しかしこれは、「止めるべき」なのです。実際の対立はともかくも、空想の中で人を憎んでいて、いいことは何一つないのです。止めるためのマインドハックとして、「書き出す」「目の前のことに集中する」「大好きなことをやる」といったことはありますが、「止めよう」としなければ止まりません

自分がジャッキの男のように「台本屋」になってしまったら、スクリプトを停止するよう努めてみましょう。1度でうまくいくことはまずありませんが、止めるように繰り返し努力すれば、やみます。そして10分も止められれば、そのときの気持ちよさに、驚くでしょう。

この、怒りの台本を止める快感を経験すればするほど、台本を止めるのは上手になります。それだけでも、自分の人生をコントロールできている幸福感が、幾ばくか手に入るはずです。