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時間を見積もる目的には、少なくとも3つあります

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タスクシュート方式でタスク管理するやり方には、いろいろな意見がありますが、中でも次の2つがほぼ決まって投げかけられる疑問です。

1 そもそもタスクの時間が正確に見積もれるはずがない
2 タスクの時間を全て見積もるのは、「縛られる」気がするのでやりたくない

1の意見に関しては、そもそも正確に見積もることが目的ではないとお答えし、2の意見に関しては、これは「タスクの時間を見積もること」を「スケジューリングすること」と混同しているとお答えします。

さらにもう一つ大事なことがあります。タスクの時間を見積もることの目的は、「どのくらい時間がかかるかを予測する」ことだけではないのです。実際には、3つの目的があります。

1.時間を確保する


ある種のアクションは、「時間を確保する」目的で、「予測時間」をタスクにセットします。たとえば「休憩」などについてはまさにこれです。

「佐々木さんは、休憩時間までも見積もるんですか?」と非常に怪訝そうに尋ねられる人もいますが、休憩時間は「確保する」のです。15分なら15分、無理をしてでも休みを取る。

これは、「見積もる」とか「予測する」という表現が正しくないのでしょうが、とりあえず「ちょっきり」になることが一番多いアクションです。なぜなら、「それだけの時間、やりたいから」それだけの時間を割り当てているのですから。

2.時間を見積もる


これが「時間の予測」です。つまり、「見積もる」というのは、3つの目的のうちの、1つなのです。

もちろん「正確に」なるとは限りません。「その通りに」できるとも限りません。「縛られる」というのも、少しちがいます。イヤなら、そしてそれですむなら、無視すればいいからです。

「見積もり」はシミュレーションの手段に過ぎません。これにこれだけかけて、それにそれだけかけて、それから休みをこれだけ入れたら、全部で何時間かかるのでしょうか? ということが分かれば、それでいいのです。

シミュレーションと結果が違うのは、当然あり得ることですし、「それでは仕事が回らない」というのも、何かが誤解されている気がします。「仕事が回らない」とすればそれは、シミュレーションをしたせいではないでしょう。

「予算を立てても、必要なモノを全て買うことができません」というのはおかしいでしょう。「ええ。それはお金が足りないか、必要なものが高すぎるのです」としか、答えようがありません。その場合、お金をもっと稼ぐか、必要経費をさらに切り詰めるか、どちらかしかないでしょう。

タスクにその話を当てはめるなら、仕事の速度をさらに上げるか、それともやることを減らすか、どちらかしかないでしょう。「予測」はあくまでも仮定的な結果を知るための手段であって、「予測した」からといって仕事がその通りに片付くことを保証するはずもなければ、強制するわけもありません

3.時間で縛る


とは言え、「タスク時間の見積もり」が、行動を縛ることも、あります。これが「見積もる」ことの3つ目の目的です。

最低でも15分くらいは、部屋の掃除に当てておいた方がいいでしょ」というわけです。これは1番目の「確保する」とよく似ていますが、「イヤでもこれだけはやる」という点で、正反対とも言えます。

1番目は、やりたくてもこれくらいにしておく、という意味でした。3番目は、イヤでもこれくらいはやる、ということです。

ここら辺に「縛られる」という感覚を、ことさらに抱かせる要素があるのでしょう。「私は自由を愛する人なので」という批判につながってくるわけです。

ただし、これもやはりちょっとした誤解なのです。別に「自由を愛する」でも全くOKなのです。これもお金にたとえるとわかりやすいと思いますが。

たとえば、家計をきっちり把握して、予算をしっかり立てたとしましょう。光熱費にはいくら、食費にはいくら、医療費にはいくら、税金にはいくら、保険にはいくら、そして貯金はいくらいくら、と。

しかし、そのまめまめしさにうんざりして「私は自由を愛する人なのでもうそんな予算など知ったことではない」というわけで、お菓子にほとんど全財産をつぎ込みました、ということでもいっこうにかまわないと思うのです。

ただ単に、私たちは「有り余るほどのお金」を持っていないので、「最低でも○○円くらいは、娘の教育費のために貯蓄し」て、「最大でも○○円程度に、Mac関連に費やす」ということにするわけです。

予算を立ててもただ単に、予め結果を家庭的に先取りすることしかできません。予算が何かを強制したり、お金を増やしたり、最適な結果を保証したりしてくれるはずがないのです。