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「締め切りまではけっこう日がある」危険な状況

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学生時代から、この問題には苦しめられてきました。

私たちは、よほど熟練したことについてでないと、時間を正確には見積もれません。ですから、「明日が締め切り!」というような、あまりにも明確すぎて、絶望するしかないような状況にならないと、なかなか絶望することも出来ないのです。

447ブログ: 期限までに終わらない仕事はやっぱり終わらない、だから次の一手をにはこのことについて、生々しく解説されていました。

やっぱりどうやっても終わらないのです。睡眠なんてもってのほか、食事をとる時間すら非効率だとさえ思えてきます。

部外者に持つことの出来る感想はせいぜい「ひどく身体に悪そうだ」ということくらいです。しかしこういう話は、けっこう頻繁に耳にします。いったい何のためにこういうことをしなければいけないのでしょう?

なぜ、こんなに頑張っていたのでしょうか?それには理由があります。お客さんとの信頼関係はとても大事なものなので、期日は必ず守ることと教えられているからです。

こうなってくると、特に誰が悪いというわけでもないため、むしろ脱出口が見えなくなってきます。本来、誰がどうやっても間に合わないことをがんばるのが最善、というワケなのです。

しかし、心理学の教えによれば、人は動機もないのにこんなに消耗する行動を取らないものです。この場合の動機とは、何なのでしょう? 間に合わないのは明らかなので、間に合わせるために全力を振り絞っているのではないはずです。

でも現実的に期日までに終わらないのです。それでも頑張るのは、「これだけ努力しても終わらなかったのだから仕方がない」、と思って頂くためではないかと思います、今思い出すと。

ここが私には非常に「現実的だ」と感じられました。現実というのは多かれ少なかれ、こういうところがあります。

しかしそれとは別に、ここに大事な問題が横たわっているように思えたのです。間に合わないことがわかっている、というのはいつからなのか? 私たちは長期になればなるほど、時間の見積もりがめちゃくちゃになります。

感覚的に「間に合わないことがわかる」というほど、仕事が圧倒的に過剰なら、相当前に間に合わないことがわかるでしょう。それを知らせてもらった方がいい人たちは、いないのでしょうか?

今の私ならすぐにお客さんか上司に相談するでしょう。期限に間に合わない理由は必ず存在するからです。そしてその理由は全て私一人の責任であることは殆どないのです。

やはりそうでしょう。しかし「間に合わないことが明らかになる」ということと「それを告げることの出来るタイミングを見つける」こととは、同じにすればいいのですが、心理的に難しく感じる人もたくさんいるはずです。

期限まで、日数があればあるほど、自分も他の人も「がんばれば何とかなるんじゃないのか?」と考えやすいのです。これは冒頭で述べた、人間の時間感覚の、絶望的ないいかげんさと深く関係しています。

どうがんばっても何ともならないことを的確に示すことが出来るのは、理不尽にもベテランの人だけです。これが理不尽なのは、ベテランの人ほど一般的には仕事が速いからです。新人の人は結局、そもそも仕事が遅いのに、間に合うかどうかもはっきりさせられず、ただひたすら苦しむしかなくなってしまいます。

外部からの要因と作業の遅れの関連性を筋だてて説明できさえすれば、信頼関係が大きく崩れることはあまりないと思います。ただし要因が発生したタイミングで相談することが大前提です。

本を書いていても時々いわれるのですが、「期限まで全然日程がないのですが、何とかなりませんか?」という問い合わせがあります。「何とか」とはどういう意味なのか。私はよくひかれるくらい、分単位で自分の時間の予実を出しているので、原稿書きのような慣れた仕事なら、何十分で何文字進められるか、正確に知っています。

ある要因が発生したからこれだけ遅れる、この時間の見積もりが過去の私は読めなかったのです。感覚的に遅れそうだとわかるのと、具体的な日数が見積もれるのとは雲泥の差があります。私の経験上、「感覚的に遅れそうだ」、では相手に伝わらないです。

物書きにとって、「感覚的に見積もれる」ことと「具体的な日数を示せる」ことの間には残念ながら「雲泥の差」はありません。どっちにしても「何とかなりませんか?」といわれるでしょう。

しかし、締切まで日があればあるほど、「日数が足りない」ことが伝わりにくいのは確かです。だから、ぎりぎりまでがんばってしまう。締め切り一秒前に「あと10000字残ってしまいました」と報告したなら、「何とかなりませんか?」と言う人はいないのです。