心理ハック
008 仕事の出来る人が絶好調だと少しゆるめた方がいい古典的な理由
この記事は2010年11月20日の記事を加筆修正しました。
上図はおなじみの、ヤーキーズ・ドッドソンの逆U字です。ここで言っていることは決して難しいことではなく、ほどよい緊張状態だと、いいパフォーマンスが発揮できます、というだけのことです。
緊張のしすぎも、気のゆるめ過ぎも、ともにパフォーマンスのためにはよくないわけです。
これは約100年前に発表された概念ですから、比較的歴史の浅い心理学では「古典」的なものです。直感にも反しませんから、有用ではあるけれど、あまり取りざたされない話ではあります。
課題の難易度によってピークパフォーマンスはシフトする
しかし、上図のように左右にシフトした図は、たいていの人にとってなじみのあるものではないし、必ずしも直感通りでもないでしょう。言葉で説明すれば、
・難しい課題では緊張感をゆるめた方がうまくいく(と言うよりも緊張しまくっても無駄)
・易しい課題には緊張感を高めるとうまくいく
ということになるのです。
今回は特にこの「易しい課題」に注目していただきたいのですが、能力が高い人にとって、課題は相対的に「易しく」なります。
そのような人が、バリバリと仕事をこなし、どんどん片付けているという状態は、本人も周囲も気持ちのよいものではありますが、覚醒レベルはかなり高くなっていることが、図からわかります。
この状態は、危険です。そもそもずっと高い覚醒レベルを維持しているという状態そのものが危険ですが、もう少しアクセルを踏み込むと、一気に仕事が出来ない状態に入り込むのです。
それも緊張レベルは極端に高いままにです。その人たちの中には、こんなふうに思う人もいるでしょう。「自分はずっと仕事が出来るつもりでいたけれど、実は全然無能なんじゃないか? さほど難しいとも思えない仕事を、緊張してやっているのに、うまくいかないなんて?」
有能な人が、それなりの緊張感を保って、その人にとっては十分やれる仕事を、びしびしこなしていくというのは、実に何の問題もないようですが、こうした問題もあるわけです。
テンションは高いはずなのに?
2011年3月11日に起きた大震災後、「気がせくばかりで仕事が手につかない」という声が上がるようになりました。気がせく理由は色々でしょう。興奮していて当然ですし、不安が高まっているのかもしれません。刺激的な情報に晒されすぎてもいますし、「何かしなければ」という思いにせき立てられているかもしれません。
理由は様々ですが、精神状態は上図における「過剰覚醒」の状態にあります。この心理状態の時人はどうしても「ふつうに仕事がやれる」ように思ってしまうのです。ですが人前で上がっているとうまくしゃべれないように、テンションが高くなっていれば仕事がどんどんできるというものではないのです。
やる気があればうまくいくというのであれば、教習生がいちばん運転がうまいでしょう。事実は逆に、居眠りしそうなベテランドライバーの方が運転がうまいわけです。テンションが高ければ仕事がはかどるというものではありません。低すぎるときはそう思うでしょうが、高すぎても低すぎるのと同じようになってしまうのです。