ライフハック心理学

心理ハック

001 同じような活動の楽しさとつまらなさ

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2006年3月28日の記事をリライトしました

この記事は、「内発的動機づけ」と関係しています。次の引用はウィキペディアより。

内発的動機づけ

内発的動機づけとは好奇心や関心によってもたらされる動機づけであり、賞罰に依存しない行動である。これは特に子供は知的好奇心が極めて高いために幼児期によく見られる動機づけである。しかし知的好奇心だけでなく、自分で課題を設定してそれを達成しようとするような状況においては自分が中心となって自発的に思考し、問題を解決するという自律性、また解決によってもたらされる有能感が得られ、動機づけとなり得る。一般的に内発的動機づけに基づいた行動、例えば学習は極めて効率的な学習を行い、しかも継続的に行うことができる。これを育てるためには挑戦的、選択的な状況を想定して問題解決をさせることが内発的動機づけを発展させるものと考えられる。

http://bit.ly/eDw7Bm

私が会社勤めをしていた時期、同僚に大の競馬好きがいました。それはもう大変なもので、ほぼ毎日、競馬新聞を手に持って、赤ペンでチェックを入れたり、ケータイで馬券を購入していました。そんな人はざらにいるかもしれませんが、私の周りではその人一人きりだったので、大変興味を覚えました。

その人とは、たまたま席が隣だったので、私は彼に、エクセルの使い方を教える、という役割を振り当てられました。エクセルの使い方といっても、もっぱら住所録のデータ入力と、たまに関連する顧客番号検索、電話番号などの単純な並べ替え操作、といった程度でしたから、まだ若かった彼は、苦もなく覚えてくれました。

すると、彼は競馬マニアの本領を発揮して、覚えたてのエクセルを使って、競馬データの整理にのり出しました。それからが、私にとっては大変で、彼は競馬に関する「ありとあらゆること」を、エクセルで管理しようとするのです。業務の顧客データに関しては、私にほとんど何一つ質問しなかったくせに、ことが競馬のデータとなると、仕事から帰って、家でくつろいでいる時間にまで、携帯が鳴る始末でした。

私はこの出来事に際して、なんだか興奮してきました。彼はいったい、どうして競馬となると、これほどまでに熱を上げることが、できるのか。エクセルでデータ管理するということで言えば、顧客管理も競馬管理も、ほとんど同じです。と言うより、競馬データの完璧管理の方が、はるかに面倒です。だからこそ、業務に関しては質問が出ないのに、競馬データ管理では、私に山のように質問を浴びせてきたのです。

それは競馬の方が、データ管理のしがいがあるからさ、ということになるのでしょうか。しかしその「やりがい」とは、いったいなんでしょう。当時私の勤めていた会社の給料は、不景気な時代にしてはそれなりによくて、一件あたりの実入りを比較するなら、競馬よりもはるかによかったはずです。

業務と同じようなことを、比較して「実入り」が少ないのに、何倍も熱中してやることができる。それは「競馬」は遊びで、「顧客管理」は仕事だからでしょうか?おそらくそのとおりなのでしょう。しかしそれは、じつに認知的な発想です。つまり、やることが似たり寄ったりでも、競馬なら熱中できるのに、仕事だと熱中できない。儲かるから熱中できるのではなく、仕事ではないから熱中できる。

が、私は最近になって、むしろこの「熱中度」を左右しているのは、仕事か遊びかということもさることながら、不確実性という要素なのだと、思い始めました。人間は、安定確実な結果には、気が向かないのではないか。不安定で、リスキーなことの方が、それがなんであってもやりがいを感じるのではないか。もっと言うなら、ワクワクするには、不安が必要なのではないか。

と思うと、文明生活圏での自殺率・うつ病発生率の高さが、なんとなく分かるような気がするのです。私たちは生活にギャンブル性が少ないから、無気力に陥りがちなのではないでしょうか。