ライフハック心理学

心理ハック

029 目的達成の快楽

みなさんは「スキナーボックス」という心理実験装置のことを、お聞きになったことがありますか?

行動心理学者のB・F・スキナーは一種の天才で、いくつもの面白い実験を考案しています。彼のアイディアのうち、もっとも有名になったのは「オペラント条件付け」と呼ばれる実験でした。

「オペラント条件付け」においてスキナーは実に面白い実験をしています。ネズミがレバーを倒すとえさが出るように仕掛けをしておくと、ネズミは「レバーを倒せばえさがもらえる」ということを「学習」し頻繁にレバーを倒すようになるのです。

さてそんなネズミは素朴でほほえましく移るかもしれませんが、誰かさんに夢中になってしまった女の子もこのネズミそっくりな振る舞いをすることがあります。「メールのチェック」をすると、「彼氏からの新規メール」というものが出てくることを「学習」してしまうと毎時間、時には十分おきに「メールチェック」してしまいます。

開放感とストレス


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初期のうちには「レバーを倒せば必ずえさが出てくる」装置で実験されていましたが、その結果が面白いと分かってくると他にも色々試したくなるのが科学者です。たとえば「めったにえさが出てこない」装置にしたらどうなるでしょう? ひんぱんにチェックするのにめったにメールしてくれない彼氏だったら?

「レバーを倒すことを覚えた」=「レバー倒しのロボットを作った」ネズミにレバーを見せればもちろん「倒す」でしょう。しかしそこでえさが出なければ何度も何度も倒すでしょう。そのときのネズミの心理にはかなりストレスがあるに違いありません。

初めのうちには頻繁にメールをくれていた彼氏が、日に3度から日に2度になり、ついには毎日もよこさなくなり、1週間も間が開くようになると、「ストレス」が争議を引き起こすことになりかねません。しかし実のところ、その「ストレス」の元凶であった「緊張感」が即座に解放されていた頃は、それが「幸福感」であったのです。

これと非常によく似ているのが、「交通渋滞」です。渋滞にいらいらさせられるのは、空いている道路をブーンととばして、素早く目的地に着くことが快感だと思うからでしょう。

世の中には、やけにせっかちな人もいれば、やけにのんびりな人もいるのに、非常に多くの人が一様に「渋滞」に苛立つ理由を知りたいと、私は常々思っていました。考えてみると「渋滞」という目的はないのがその大きな原因のようです。必ずしも「ドライブ」の目的は目的地に着くことではありませんが、「ドライブ」のイメージは爽快に飛ばすことであって、箱崎付近(東京圏以外の方、ゴメンなさい)でノロノロノロノロすることではないのです。

ただし、「緊張感」をため込むことによって「開放感」を増強することもできます。渋滞を抜けたときの開放感は空いているに決まっている道をとばす開放感より大きく感じられます。腹を立てすぎていなければ、一週間ぶりの恋人からのメールは強い印象もたらすでしょう。