ライフハック心理学

心理ハック

038 忘れる能力を高めたい

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最近、書店へ行くと「記憶力を鍛える」関連の本がたくさんありますが、私としてはまず、「記憶力」で一番鍛えたいのが、「忘れる能力」です。

人生、いやなこと、すぐに忘れてしまいたいこと、鬱病の元凶になってしまいかねないことに、たくさん出くわします。これは、誰もがそうでしょう。しかもそれらは、生きている年数が増えれば増えるほど、確実に増えていくものです。出来事に出くわす回数自体は。

しかし、記憶力というものがなければ、何年生きていたとしても、いやなことは少しも増えないのです。短期記憶の限界量、5-9の法則に従うなら、長期記憶がなければ、人生で出会ういやな人の最大人数は、9人となります。

現実=記憶ではない。といわれれば、それはそうかもしれません。が、私達人間にとって、世界の現実とは、自分の記憶に他ななりません。大脳という狭くて暗くて静かな球体に、私達一人一人の全人生+全世界がつまっています。大脳が損傷を受ければ、私達の世界から、ある種のものは消滅し、存在しないことになるのです。「そこになければ、他にはない!」のです。

いやなことも、同じです。忘れてしまえば、存在しなかったことになるのです。よほどのことがあれば格別でしょうが、あなたは20年前の6月に、少なくとも一つはあったであろう胸がむかつく出来事を覚えていますか?今思い出そうとする瞬間まで、そんなことがあったという可能性すら、意識していなかったのでは?

PTSDや、「記憶しがたいほどおぞましい体験」は別格なのですが、長期記憶として適切に保存しておける記憶に、「思い出したくもない」ものは、実はほとんどないようです。

「不安」は常に、「未来へ思いを馳せる」ことからやってきます。決して、未来そのものから不安は生じませんし、すでに出来事として保存されている「記憶」そのものから、不安が生まれることもありません。

「不安」や「心配」は、今遭遇してしまった、このおぞましい事件に、将来何らかの形で再び遭遇し、しかもまた失敗するのではないか?という気持ちです。だから、「忘れるわけにはいかない」と、そう思っているわけです。だから、いやなことをぐるぐるぐるぐる反芻し、「忘れてしまえればいいのに・・・」と心の中では思いつつも、やはりそれにしがみついてしまうのでしょう。

忘れてしまうコツ。
それは、「後で思い出して、対策を編み出せる」という(偽りでもいいから)安心感を持つことです。
そのために、

1.「いやだったこと」を保存する。できれば、後から見ても、何があって、対策を立てる方法を再考できるように、記録しておく

2.記録したら、即、他のことを考える。「いやなことのハンスウ」を始めそうになったら、「後で、問題を解決するんだから!」と自分に言い聞かせて、絶対に思い出さないように、自己訓練する。

これは実に、容易に出来るはずです。元々人間は、思い出そうとがんばらなければ、一つ事に記憶ととどめて生きてはいけない動物です。しかも、忘れるのはとても得意。大事なことでも、すぐに忘却し、たいてい二度と思い出せません。まして、思い出したくもないことに、延々作動記憶を費やすことも、ないでしょう。