ライフハック心理学

心理ハック

045 「思い出せない」問題

これはただ性格的なことかも知れませんが、私はあまり「教育問題」について言いたいことはありません。けれども時々、「んー?」と感じることくらいはあります。(誰にでもあるかも知れません)。

その一つが、漢字の書き取りテストです。学校の運営上当然なのでしょうが、時間制限があります。そして今ではないのかも知れませんが、一定の得点以下の生徒に対する罰もありました。書けなかった漢字を百回書くとか、間違った漢字一字について校庭を1周するといった程度のものでしたが。ちなみにそれで7周した「記憶」がありますがけっこう大変でした。もっともこの種の記憶は「作り出された」ものかもしれないのですが…。

気になるというのは、このようなプレッシャーを与えることで、記憶を再生しやすくしようというねらいがあるのか、それとも他の狙いがあるのか、よく分からないところです。べつにサディスティックな意図はなかったと思います。私はそれほど先生に悪意は感じませんでした。

実際、とくに「のど元まで出かかる現象」においては、「思い出そうとし続ける」ことがかなり効果的です。なのに時間を短く制限するテストが続けば、人は「思い出そうという努力はムダ。それよりきちんと覚えておかないと」という風に判断してしまうでしょう。

それから一問間違う度に、罰則があるというプレッシャーもかけられています。これも先に述べたとおりで、プレッシャーと言うほどの内容ではありませんがテスト中はなぜか気になるものです。(たいした罰でないと気付くのは罰を受けているときです)。この「大いに気になる」が余計なのです。記憶再生にとにもかくにも大切なのは、「集中して時間をかけて再生しようとがんばる」事にあるわけです。

ところが小テストの時間帯に生じる心理現象は、この反対で、「注意分散しやすく、思い出すのに使える時間はほんの少し」です。この条件下で思い出せないような勉強の仕方では、「覚えた内に入らない」という妙に厳格なものです。

そういう癖をあまりつけると、「覚えた内に入らない」と「完璧に覚えた」の中間を生かす能力が、むしろ失われそうです。実際の所すぐに思い出せずとも一分多く考えれば、かなりのことが思い出せるのです。

そういうことは脳科学に関する知見がないと分からないのだという人もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。ワイドショーで見た芸能人が誰と離婚したのかといったことを、なかなか思い出せなかったけど、一日中考え続けていたら急に思い出せたという経験をお持ちの人は多いでしょう。時間をかけると思い出せる可能性は高くなるものです。この種の記憶再生には誰も罰則を設けないでしょう。プレッシャーはたいてい不要です。

何かを思い出す能力を付けるには、リラックスして時間をかけて思い出すべくつとめることです。