心理ハック
052 怒りのメモがアイデアを呼ぶ
昨日の話にさらに続きます。
まず、二、三帖の紙をとって、三日の間続けざまに、嘘や気取りを交えずに、諸君の頭に浮かんでくることを全部、何から何まで書きつけるがよい。諸君が自分自身について考えていること、諸君の女たちのこと、トルコ戦争、ゲーテ、フォンクの犯行経過、最後の審判、諸君の上役、こういうことを書くがいい――そうすれば三日後には、諸君は新しい、思いもよらなかった思想を持つようになったおどろきのあまりに、すっかり我を忘れてしまうだろう。
『フロイト著作集9』
私はこの一節を時々引用します。拙著『ライフハック心理学』(東洋経済)にも書きました。
無意識の内容を意識の見える光の下に引っ張り出すには、勢いのある連想が必要なのです。というのが昨日、一昨日のエントリでした。
2〜3ページの紙にどんどん書きたいことを書き付けるだけでそんなに大した発想が浮かぶなら、誰だってやりたいところでしょう。でも私の本を愛読された方でも、めったにこれを実行されたかたはいないはずです。なぜなら時間がないからです。
「3日の間続けざまに」といったところがネックになるでしょう。
しかし怒っているときは違います。
腹を立てたら勢いよくメモを書く
特に他人に怒りをぶつけられないとか、ぶつけるわけにいかない人には有効です。なぜなら怒りをためこむことは心理的によくありませんが、書き出すというのは悪くない方法だからです。
それに日頃からよほど勢いにかける人でも、本気で怒っているときには勢いがつきます。「嘘や気取りを交えずに、諸君の頭に浮かんでくることを全部、何から何まで書きつけるがよい」というアドバイスにも比較的すんなりと従うことができます。
怒っていると人は正直になれます。「正直に言って」などというフレーズが怒りとともに現れるところから見てもそれがよく分かります。
もちろん「アイデア発想のために怒りを利用しよう」などと思っても、そうはいきません。そんな気分にはなれないでしょう。
内容にはかまわずメモればいいのです。「手紙」ではよくありません。色々考えたりテーマに一貫性を持たせるべきではないのです。メモは殴り書きでいいので、スピーディに書き付ければきっと「脱線」して「思いもよらなかった思想を持つ」こともできるはずです。
私自身時々、怒りにまかせてメモを書き、そのネタをブログや本に活かすことがあります。このエントリなどはまさにそれで生まれたものです。