ライフハック心理学

心理ハック

054 「自尊心のポートフォリオ」を考える

自分についての知識の量は膨大であるが、それらすべてがつねに同程度に活性化し、利用されやすい状態にあるわけではない。(p91)

ここから「作業自己概念」という言葉が生まれます。そのときに携わっている作業によって、思い出しやすい記憶や考えつきやすい発想やとりがちな言動というものが変わってきます。

きわめて漫画的な事例を挙げると、あさりちゃんのパパです。彼は家では女3人にいじめられているようなキャラですが、会社では部長なんですね。

余談ですが、もうすぐ100巻ですよね。

この作業自己概念に目をつけてEvernoteの分類を論じたのが北さんでした。思い出しやすい「自己」が変わるなら、そのときに必要な資料も違ってくるだろうというわけです。北さんは深層心理学の、それもユングの「ペルソナ」の概念を持ち出されていましたが。

傷ついた自己を「他のところ」で修復する


ペルソナといい、役割といい、作業自己といっても、「どれも本当の自分であり一貫したものとして感じられることに注意する必要がある」(『社会心理学』(既出))のは当然です。

そこで思うのは、だからこそ横断的にいろいろな活動の幅を持っている人の方が、自尊感情が安定しやすいのではないだろうかということなのです。

たとえば会社で恥をかいたというような経験をした場合、その場における自尊感情を修復させるためには、その場において名誉挽回するような行動をとる必要があるでしょうか? 単純に考えるとそうなりそうですが、私達の心理はそういう働き方をしません。

実は、私たちが維持しようとしている自己評価は、個別の領域ごとの評価というよりも、全体的な評価である。(p98)

具体的に言い換えるなら、会社出ていたいミスをしてどーんと落ち込んでも、家庭に戻ってその自尊感情を修復する余地は多くあるということです。家庭がないということでしたら、東京・名古屋・関西ライフハック研究会などに行ってLTをして喝采を浴びるのもいいでしょう。

この種の「行き場」を多く持って、そこここで良好な関係を保つのが、自尊感情にとってきっと大事なことなのです。

会社上司に「生きる価値もない人間」のようにいわれたとしても、そんなこととは無関係に家に帰れば自分を誰よりも必要としているような子供がいたりするわけです。「そうだよねそうだよね」と自分に言い聞かせるのは最初はいかにも無理がありますが、記憶が分裂していない限り、「どれも本当の自分であり一貫したものとして感じられる」ようになるものです。