心理ハック
017 アイデアを思いつきやすいような「仕掛け」を施しておく
知人が引っ越しをしたのですが、その際いくつかのミスを犯してトラブルに見舞われてしまったようです。これはいくつかの意味ではよい兆候です。
第1に、特殊な状況のいてミスを犯すということは、通常の環境によく順応しているということだからです。アメリカに行くと車線が反対のため、よく方向指示器を出すつもりでワイパーを動かします。運転が下手な人ほどこれはやらないのです。
第2に、これが今回のメインテーマですが、強い後悔をともなうような手ひどい失敗は、新しいアイデアを生む原動力になります。たとえば鍵の置き場所を決めておいた家族の人が、引っ越し中、鍵の置き場が消失するため、鍵をなくす。
ここで「なんで鍵をなくしてしまったのだ!」と激しく後悔したなら、人はそのことについて「無意識のうち」に考えるので、そのうちよいアイデアを思いつく可能性が高くなります。
第3に、古代より中国人は、「最悪のことが起こった直後は、今後はベターなことしか起こりえないので、最良の時である」と教えています。もちろん逆のことも言えてしまうわけですが。
「手ひどい失敗→よいアイデア」のスパンを縮めるライフハック
人は特にイライラしたときや、一刻も早く抜け出したい状況にもがいているとき、自分に対して質問を連発しています。この自問の連発こそ、アイデア発想に欠かせません。
「なんで俺がこんなことをやらなくちゃならないんだ?」
「なんでこのオンラインショップのフォームはこんなに記入事項が多いんだ?」
「なんでいまどきFaxを使わなきゃならないんだ?」
「なんで鍵をなくしてしまったりするんだ?」
これらはふつう、大声で発されたりしない質問です。ということは、自問です。本人がどういうつもりであれ、この問いを聞いているのは自分だけです。
残念ながらこれらの自問に対して、即座に名案が浮かぶということはあまりありません。しかしよく心理学者などがいうのですが、こういう強い自問を発すると「無意識で」考え続けます。
という説明を私はやや苦々しく思っています。「無意識で」というのは便利で安易な言葉です。むしろ強い後悔の感情がよく記憶に残し、その記憶のために「鍵をなくさない方法について考える」機会が増えるといった解釈でいいはずです。
そうであれば、「考える機会を意識的に増やす」ことで、よいアイデアを発想する確率を高めることはできるはずです。そうした方法の1つとして、たとえばいつも使っているタスクリストの中に、「●●について考える」という項目を忍ばせておくという方法もあるでしょう。