ライフハック心理学

心理ハック

030 怒れない人と怒りすぎる人

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No Borderのお題に触発されました。
上のおじいさんは怒っていますか?

「怒り」というのは厄介な感情です。非常に強いエネルギーを抱えているから取り扱いに苦慮するし、表出しても表出しなくても問題を引き起こしがちです。

しかも、単純な感情のようで、そうでもありません。冒頭の写真ですが、「怒り」のキーワードからもっと典型的なイメージがいくらも見つかります。でもこういう複雑な「怒り」の方が日常によく現れている気がします。

心理学者のアドバイスは・・・


「怒り」についてセミナーを開催したことがあります。そこでテーマとしたのは「怒れない問題にどう対処するか?」でした。

より厳密に言うなら、「怒りを表すことができない人は、どうしたらいいか?」というものでした。「怒れない」ということは「怒りの感情を知らない」ということではないのです。

ただし、まるで平気なように振る舞っていると、他人は「この人は怒りの感情を知らない」と思うかもしれません。「私は鈍感で怒っていないと、そう思われているかもしれない」と思うことは当人をますます怒らせますが、それを表出することができないため、あえてますます平気なように振る舞うといった、矛盾した苦しみに自分を追い込むかもしれません。

怒れない、ということは怒りのエネルギーを自分に向かわせるという問題を引き起こすのです。これは大きなストレスになります。それでも怒れないのは、表出する(他人にぶつける)リスクの見積もりを、他の人よりはるかに過大に評価しているからです。

「怒ることのできない人」に対して心理学者はこれまで、あまりアドバイスをくれませんでした。というのが不公平なら、十分役に立つアドバイスを熱心に考えてなかったように見える、と言い直しましょう。フロイトは「昇華」とか「置き換え」といった言葉を案出してくれましたが、どうすればそれができるかについてのアドバイスは、私の見たところあまり現実的ではありません。

「怒り」については反対の問題があって、アドバイスはそちらへ向けられることの方が多かったのです。つまり「あまりにも安易に怒り狂ってしまう人」の問題です。これらの人は社会的に問題を引き起こしますし、自分の怒りで心臓発作を起こして死んでしまう人もいたため、心理学者(精神科医)が対策を熱心に検討したのももっともです。

「怒りを表明する」練習もある

 もちろん、私だった怒りたくなる時はあります。友達が約束を守ってくれない時とか、誰かに傷つくようなことを言われた時とか……。でも、私は怒るかわりにその人に対してちょっと距離を置いてみるとか、冷たい態度をとるとか、そんなことですませてしまうのです。それも長続きしたことはないし、第一、相手が私の気持ちに気づいてくれたかどうかもわかりません。で、どうしてこんなに怒らないかというと、やっぱり人間関係を壊すのが怖いんです。(p68)

この本には「どうしたらいいか?」についても親切に書いてくれています。それをここに列挙することもできますし、そうしましょう。ただ、ことは「感情の問題」であるだけに、思い立ったら明日から実行できるというような代物ではありません。残念ながら「考え方に修正を施す」とか「心がけを変える」という心理的努力が必要になります。

・こんな小さなことで怒ることはないと、あっさり考えない
・怒った結果について考えすぎない。恐れすぎない
・怒りを途中まで表明しようとして、うまくいかなくても、簡単に止めてしまわない
・怒った相手の出方次第で即座に納得してしまわない。和解するべきであっても、一定の期間をおく
・怒ってしまったことに過剰に罪悪感を抱かない

ここまでお読みいただいた方が読むとこれは、恐ろしく難しいことに思えるでしょう。たしかに簡単ではありません。ただこれは「練習」によってできるようになります。「性格だから」といってあきらめてしまうのはよくありません。

「怒らない」ということは「怒りすぎる」人と比較すれば、明らかに賞賛に値することです。しかし「いつでも怒れるけど怒らない」ことのほうが、より賞賛に値するでしょう。