ライフハック心理学

心理ハック

082 自分で決定できるから社長は長生きする

企業の最高経営責任者にとって、会社の利益責任を負うことは、たしかに大きなストレスになるが、それよりもその部下の、何枚あるか分からないメモをページ順に並べるといった仕事の方が、ずっとストレスが高かったのだ。仕事上の裁量の度合いが小さければ小さいほど、勤務時間中の血圧は高かった。さらに言えば、在宅中の血圧と、仕事に対する自己決定権の度合いとの間に、関係は認められなかった。(p34)

今のところ心理学で、このことはほぼ確実に言えます。選択の結果よりも、選択できる事実の方が、人の心にとっていい意味を持ちます。強制された「いい結果」より、自分で選んだ「まあまあの結果」の方が人を喜ばせ得るという意味です。

むろん会社に行く・行かない、会社である種の仕事をする・しないなどのことについて、自分で選択できるかと言えば、そうでもないでしょう。しかしそれだけに、些細なことであっても自らの「決定権」をつなぎ止めておくことは意味があると思います。

拙著『クラウド時代のタスク管理の技術』にもこのことは盛り込んでおくべきでした。たとえどうせやることが同じで、タスク管理することなどほとんど無駄であろうと、タスクを「管理している」という感覚が大事なのです。お望みであればそれは「幻想」だと言ってもいいかもしれません。

幻想だろうと錯覚だろうと、人の心は「決定権のいくばくかは自分にある」と感じることが大事なわけです。その決定権への固執が不合理だということは、すでに行動経済学で繰り返し指摘されているところです。

しかし、不合理にも決定権に固執することの方が、合理的に選択権を放棄することよりも、比較的長く生きられ、比較的ストレスなく生きられるという意味においては結局「合理的」な考え方なのです。

引用した最後のセンテンスの意味は印象的です。「在宅中の血圧と、仕事に対する自己決定権の度合いとの間に、関係は認められ」ないのです。つまりふつうは、会社においてはそもそも「選択権」が奪われがちだということです。ですが社長はそうではない。そして社長は(たとえストレスフルでも)長生きだと、統計では言っているようなのです。