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メスザルはパトカーよりもお人形がお好き?

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Sex differences in response to children's toys in nonhuman primates (Cercopithecus aethiops sabaeus)



この写真、おそらく左側のお人形さんで遊んでいるサルはメス、パトカーのオモチャで遊んでいるのはオスです。遊んでいるのはベルベットモンキーというサルです。

勘のいい人であればこの実験はけっこうデリケートな問題を扱っているに違いないとすぐに気がつくでしょう。アメリカでやるとなれば、日本よりもずっとデリケートです。

哲学者はともかく、私達の文化的な「常識」では自然というのは二分化されて当然のものとされています。すなわち「自然環境」と「人工」という概念は区別され、時には対立したものなのです。

男の子が男の子らしく、女の子が女の子らしいのは、「自然」なのでしょうか、それとも「人工的にそう教育された(悪い)結果」なのでしょうか? この実験が問いただそうとしているのは、とりあえずそういうことなのです。

お人形さんはどう考えても「自然物」ではありません。人工物です。パトカーのオモチャなどはましてそうです。パトカーがそもそも自然に生まれるはずがありません。

ベルベットモンキーはどうでしょう。いかにベルベットモンキーが賢いとは言え「あなたは男の子なんだから、お人形さんなんかで遊ぶもんじゃありません。パトカーで遊びなさい」などとはいいそうにありません。つまり「不自然」な「教育」がベルベットモンキーに施される懸念は排除されます。

ということは「もしもベルベットモンキーのオスが、好んでパトカーで遊び、メスが好んでお人形さん遊びをする」ということが「自然に」行われたとすると、これはゆゆしき一大事です。少なくとも原理主義的な人にとってはそうでしょう。

実験の結果はその「ゆゆしき事態」でした。オスはほぼメスの2倍の時間、パトカーなど「男の子っぽいオモチャ」で遊び、メスはほぼオスの2倍の時間、人形や赤い縄など「女の子っぽいオモチャ」で遊んだのです。

もちろんだからといって誰もが安心していいのです。オスがお人形遊びをまったくしなかったというわけではないですし、この実験自体はなにも語りません。もちろんオスのお猿さんが「ぼくは男だからお人形さんなんかでは遊べないよ恥ずかしくって」などと言ったわけでもないのです。

観察したところある数値的な結果を実験が残した。ただそれだけのことです。


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もちろんこれはアメリカ人らしいこじゃれた言い回しなのでしょうがこの話と「IQ」は関係ありません。頭の良さというものはむしろチェックリストの必要性を高めるのです。

人間は頭がいいので「細部」を省きたがります。この傾向を最もよく示す心理実験として「口伝え」が用いられます。昔話がよく題材として取りざたされるのですが、簡単に言えば「人から人へと伝えられるうちに、話はどんどん変容していく」わけです。子供の伝言ゲームの面白さですね。