心理ハック
100%わかりきったことをやるときでもチェックリストに頼るべき理由
(p83に掲載された図)
上の図はどう見えるでしょうか? 少なくとも大きなネズミと小さなゾウがいたんだ、という解釈には無理があると思います。私にはゾウが遠くにいるような気がします。
解釈はいくつか考えられると思いますが、私達は何かを知覚するとき、一瞬でこれだけのことを考え出してしまうというところが大事です。決して「ただ見る」ということをしませんし、経験による解釈抜きに知覚するということができません。
経験的に脳のこうした「一瞬の解釈力」を知っている人は、時にその能力に振り回されないようにあれこれ知恵を絞ります。タスクリストとかチェックリストというのはそのためにあるものです。
これは私自身の「週次プラン」のチェックリストなのですが、だいたいこういうことをやることは頭に入っているので「必ずしもそんな長いリストが要らないのではないか?」という人もいます。でもそれは「脳が一瞬で、本人も気がつかないうちにやれること」を無視している意見です。
チェックリストはただの備忘録ではありません。忘却とは、脳の才能の暴走の1形式に過ぎません。脳は実にいろいろなことを一瞬でやれます。これは今日は無用だとか、この順番を変えてみようとか、しばらくやらなくてもいいだろうとか。
チェックリストが明示されていなければ脳の思うがままです。何しろ脳だけで行動をとるのですから。「だいたい頭で考えれば分かる」という言い方自体に、脳がチェックリスト通りにやらないということがよく現れています。
「だいたい」といって都合のいいように脳内チェックリストを書き換えるのです。その結果はわずかな違いしか生み出さないので1日やそこらでは「変化」に気がつきません。しかし365日チェックリスト通りにやると、結果がみるみる変わってくるのです。
頭でやってもリストを見てやっても「なにも違いはない」ように感じるのは、これが「備忘録」ではないからです。頭は忘れてなどいないのです。何度もやれば記憶に定着することは明らかです。チェックリストはただ脳による「歪曲」を許さないだけです。
違いがないというのは、チェックリストを見ても何かを「忘れないようになっている」気がしない上に効率化にも貢献せず、精神力の節約にすら役立っていないように感じられるということです。それではチェックリストなど使わなくなって当たり前。それでも使うべきなのです。
脳は「何かをやっている」という自覚をあなたに持たせることなく、極めて大量のことをやってのけます。冒頭のシルエットを見て一瞬で「ゾウが小さい」ように感じたのは、脳がそう感じさせたからに他なりません。下の図を見たとき多くの人は遠近感を感じないはずです。しかし冒頭の絵では感じる。脳が違う働き方をしているからです。