ライフハック心理学

心理ハック

心配事がありますか?

“The Worry Cure”という本によるとアメリカ人の2000万人近くが慢性的な心配性を抱えているそうです。こういう統計を目にする度にどうやってはじき出したかが心配になるのですが、米国認知療法研究所所長の書いた本ですから余計な心配でしょう。

言うまでもないことですが「将来を心配する」というのは長期的な展望記憶を持った人間にとって、ごく自然のことです。地震や津波が来るかどうかを「心配できる」のは人間だけです。ペットボトルや懐中電灯を買うことができるのはこの能力のおかげです。

「健全な心配」と「病的な心配」というものが分けられるとすれば「無意識のうちに不可能事を望む」のが慢性化したらおそらく「病的」ということになります。冒頭で紹介した本の著者ロバート・リーヒィもそう指摘しています。

心理的な問題というのはだいたいそうです。不可能事を無意識のうちに望むようになるところから始まります。「あらゆることを完璧にコントロールしたい。それができている人も現にいる」という幻想を信じ込んでしまうと「自分はなにもコントロールできていない。このままでは将来大変なことになる」という心配に四六時中とらわれるようになるわけです。

幻想を信じることが過剰な心配性に繋がるとすれば、その幻想から解放されるとよいということになります。さすがにリーヒィは「認知療法研究」の人だけあって「対策」を幾通りも紹介してくれていますが、多くを紹介するのはむしろ心配を煽るばかりですので3つだけにしておきます。重複しているものも多いので心配無用です。

・心配する時間をスケジューリングする
・心配事を思い出してみる
・心配事に対する認知を変える

1番上が一番具体的だと思いました。「心配する時間を決め、それ以外の時間は心配しないようにする」というやり方です。「それができるなら苦労はない」と思われるでしょうが、やってみると意外とやれるので試してみましょう。

2番目のはちょっと皮肉が入っています。「心配で心配で……」と四六時中心配している人は「意外と自分の心配事を忘れている」というのです。要するに杞憂に過ぎなかったか、実はそれほど大したことなく対処できたので忘れてしまうのだというわけです。

これも心理的な問題によく見られる現象ですが「よい出来事ほどよく忘れる」のです。だからいつも新しい事柄について心配しているというわけです。ということは実はそれほど心配しなくてもいいということになります。

3つ目は、これがいわゆる「認知療法」です。「ものの見方を変える」というやつです。あまりありがたみのない方法に聞こえるのは承知しています。リーヒィは私よりずっと承知しているでしょう。

でも長期的に繰り返し訓練すると、これがじわじわと一番有効だということが分かります。「その心配事」には悪い面しかないのか? 「見方によっては」メリットもないか? などと見方を変える努力をすることです。これ以上色々書いても受け入れられない人には受け入れられないものなので、これはここまでにしておきます。