旧ライフハック心理学

心理ハック

「先送りした」というログでも必要な理由

大橋悦夫さんのTaskchute2はマニアックなログが残るので一部界隈で有名ですが、やってしまったタスクのログをそんなに詳細に残すことはない、というのは不適切です。やっていないタスクのことでもできればログに残すべき明瞭な理由があります。

先送りの自己ハーディング


「自己ハーディング」という言葉は専門用語ですらなく、一種の造語に過ぎませんが「ライフハック心理学」的には大事な概念です。一時それなりに話題になったダン・アリエリーの造語です。

ハーディングとは列に並ぶこと、とこの場合にはとらえて下さい。行列のできるラーメン屋の列には、並んでみたくなるものです。並んでみたくならない人も多いでしょうが、気にはなるでしょう。少なくとも大行列ができているラーメン屋のすぐ隣にある、客が1人も入っていないラーメン屋には、入りたくないものです。

わたしたちは食べるものや着るものを決めるとき、人のまねをすることが多いが、それと同じように、いわばバックミラーで自分自身を見るのだ。なにしろ、よく知りもしない他人のまねをするくらいなのだから、自分が一目置いている人物、つまり自分自身のまねをする可能性は、ずっと高いのではないか? いったん自分が何かを決定するやいなや、それが適切な決定だと思い込み(不適切なはずがないじゃないか?)、だから繰り返すのだ。(p345)

さらに詳しく知りたい人は、この本を読んで欲しいのですが(とくに第10章を)、ダン・アリエリーは共同研究者とともに、人が「いったん何かを決定」すると、その後は半ば自動的に同じ行動を繰り返すということを、あの手この手で実験して見せます。おそらく私達が無自覚なほど、彼らは正しいでしょう。

行動が不適切でも、決定はたいてい「適切」と感じられるものです。たとえば何かバカ高くて甘ったるい飲み物を貯金とダイエットを決意した同日の朝に飲んでしまうのも「やむを得ない事情」あってのことです。もちろんその通りです。誰が人の心の奥底まで理解したうえで反対できるというのでしょう?

そうです。カロリーは過多。値段も不適切。そんなことは重々承知している。しかしこのくそ暑い朝、つまらないことでつまらない上司につまらない小言を言われている身になってみれば、数百円と数カロリー(?)のオーバーがなんだというのでしょう。スッキリしたいし、事実スッキリしたいのです。貯金とダイエットに対しては不適切かもしれないが、決定は、「この私自身の」下した決定は、このときばかりは適切、といわざるを得ないのです。

この「適切な決定に基づく行動」は爾後、半自動的に繰り返されることになります。これをダン・アリエリーとその同僚は「自己ハーディング」と呼んだわけです。つまり、「貯金とダイエットに努める大原則を踏まえ、ただしひどいストレスを解消するやむにやまれぬ事情がある場合においては、その限りではない」とするものです。

タスクの先送りも全く同じことです。というよりも、上記がそもそも貯金とダイエットの先送りです。感情的な決定は、その後半自動的に繰り返されます。それだからこそ、最初の決定は非常に重要なのです。ある意味で私達の現在とは、その大半が、過去の決定に基づいた半自動的な行動の集大成だからです。